忘れることに備える記録

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チョコレートドーナツ

ANY DAY NOW

制作2012年 日本公開2014年 アメリカ 97分

監督:トラヴィス・ファイン

キャスト:アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイヴァ

僕たちは忘れない。

ぽっかりと空いた心の穴が愛で満たされた日々ー。

 

全米絶賛!観客賞を総ナメにした、実話から生まれた魂を震わす感動作

 

1970年代のアメリカの実話を基に、母親に見捨てられたダウン症の少年と一緒に暮らすため、周囲の偏見と闘うゲイカップルの姿を描いた人間ドラマ。

ゲイであるがゆえに法の壁に阻まれる苦悩と、血のつながりはなくとも、少年を守るため奔走する主人公たちの姿が胸を打つ。

ぽっかりと空いた心の穴が愛で満たされる感動作。

 

なんとなくこういうあからさまな感じのノンフィクション系が苦手なんですが(それでも泣くから余計アレだ)、アンコール上映ということと、アラン・カミングの歌と踊りが気になり再び伏見ミリオン座へ。

雨の平日、お昼なのに館内に入ってすぐ「人が…多い」って思うくらい人がいた。

レディースデイということもあるのかもしれませんが、老若問わず、女性8割くらいの人数が。

とりあえずチケットを買ってコーヒー飲みながら開場待ち。

開場のアナウンスが流れたので3階に移動、ちなみに私は28番。

階段でボチボチ上に上がるとそこで再び驚く。3階フロアーにいっぱいの人。

アンコール上映でこんだけ人がいるのか…と思いつつ席へ。

1人客が多いのに人との間に空席無しで座っていく程の人。

人気なんだなーとしみじみしながら予告を見て次観たいものを物色しつつ。

 

いやー良かった。変な偏見を持たずに観に行って良かった。

始まってすぐ完全に引き込まれてました。そしてラストはそこらから鼻をすする音が…私はグッと我慢をし、車に戻ったところで思い出しジワリ。

感動ではない、グッと、ジーンと心に沁み渡る切なさ、やりきれなさ。

ゲイとかダウン症とか、そういうのだけではなく、色々なことに通ずる問題を描いた作品だと思います。

 

そしてアラン・カミングのドラッグクイーンとしてのダンスも、歌も良かった!

悩殺してくるような踊りがもういっそ可愛く見える、口パクがまた愛しい(笑)

ルディとして歌う歌は歌詞がもう、ストーリーを彩る彩る。アランの声がまた良い。

 

 そしてマルコ役の子は本当にダウン症のようですが、この子も演技が良かった。

勿論ポール役のギャレット・ディラハントも良かったです。カミングアウトができずにモヤモヤを抱えビクビクしてるお堅い感じ、そんな人が偏見に立ち向かっていく感じがとても伝わってきました。

 

とりあえずもう一度、いや何度も観たい作品だと思い帰宅してBDをAmazonでポチッとしたのでした。

 


『チョコレートドーナツ』予告編 - YouTube

 

この予告動画だけでもう涙出る、ちくしょう。

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

とりあえずね、もう、切ないんだよ!!

自由に生きてるように見えて本当にやりたいことがやれていない、でも真っ直ぐに生きるルディ、何かを変えたかったのにゲイであることに負い目を感じている検察官のポール、ヤク中の母親に育児放棄されているダウン症の少年マルコ。

 

ルディとポールが出会うシーンはとても好きでした。

セクシーな服装で口パクで誘うように踊るルディがもうキモいやら可愛いやら。

ポールの表情もなんとも言えない。これ引いてるのかな?と思ったら楽屋に訪ねてきて次のシーンでは車内でちょっとしたコトに及んでいるという。

いっそ笑ったね。

 

で、検察官という職業柄もありゲイであることをひた隠してるポールが、変わっていく様もとても良かったです。

変わりたいと思いつつ変われない、でもゲイであることがバレてしまって解雇される。絶望しつつもルディに「今から変わるチャンスだ」と言われ、本当に変わっていく。開き直りのような部分もあったんでしょうが、しっかりと前を向いていく彼が良かったです。それがルディとマルコの力っていうのが伝わるのもまたいい。

 

3人が食卓を囲むシーンで、食べないマルコに「何が好きなの?」と聞くポール。

「ドーナツ」

「キミは運がいい」

そう言ってドーナツを持ってくるポールに「夕食にドーナツなんて」っていうルディ。

「たまにならいいよ」ってマルコに渡すポール。

「ありがとう」って笑って食べるマルコ。

なんてことない家族の風景だよね。

健康とかにうるさい母親と、優しい父親、愛されてる子供。

ゲイカップルと他人の子ってだけで、普通の家族。

出会って数日だろうがなんだろうが幸せそうなんだよね。

 

最近ではゲイカップルの子育ては認められてるけど、当時の偏見と差別はこんなだったのか…と心が痛くなる。

そこに愛があろうが、幸せだろうが、ゲイが子供を育てるなんて。それだけなんだよね。

マルコが2人と暮らしたがってても。

子供の意見なんて何の力にもならないんだな、むしろ聞いてもくれないんだなって。

 

ルディが施設のマルコに「また一緒に暮らせるようにするから荷造りして待ってて」というとマルコは「約束?」って。

そのルディの言葉を信じて荷物をまとめて玄関でルディを待つマルコ。

迎えが来なくてベッドで泣くマルコ。

もう堪らない。心の中はもう「マルコオオオオオ!!!」って感じ。

 

一方ルディとポールの裁判ももう…

審査と言いつつ認める気なんてさらさらないやん!って。

誘導尋問とも呼べないような雑な否定の仕方で。子供の前で女装したことあるか、キスしたことあるか、子供の好きな玩具がドレスを着たブロンドの人形なのは知っているか…

黙れ!!アシュリーはルディと会う前から大事にしてるんだよ!!!!

って私が反論してやりたかった…

ルディもポールも心で語ってるのに、あんなに話が伝わらないものなのか。

偏見ってすごい怖い。

 

最終的にヤク中の母親が刑期軽減の変わりに親権返還を求めて裁判終了になるんだけど、施設から家に帰るマルコが…

元々母親と住んでいたアパートに連れて来られた時点で車の中から「ここは家じゃない」って。ずっと「家じゃない」って言ってるのに。

なんで聞かないのおおお!!!

結局マルコはルディとポールのいる家に帰ろうと3日間探し続けて橋の下で亡くなってしまうわけで。

ハッピーエンドが好きだったマルコはハッピーエンドじゃなかったなんて。

魔法使いの少年マルコはどんなハッピーエンドを迎えてたんでしょうね…

 

そしてラストでポールが裁判官、検察官、弁護士、マルコを取り上げた人達にマルコが死亡した新聞記事を送った時のみんなの表情が、また何とも言えないんだよね。

後悔って程じゃない、でもちょっとした罪悪感的な。

人一人の人生が、そんな風に終わったというのに、ちょっとした罪悪感的な。

 

所々で流れるアランの歌がまた…

堂々と歌う姿に余計哀愁が…

 

とりあえず3人は本当に普通の家族でした。

特にルディは男性だったし可愛い彼女だったし母親だったし。

あれはアラン・カミングだから出来た役かなって思う。

リアルだった。リアルにゲイだった。アランはバイですが。

ゲイ映画では「シングルマン」が思い浮かびますが、あれはコリン・ファースのねちっこい視線にゲイを感じたけど、これはもっとわかりやすく明るくゲイです。

男性でも多分こっちの方が嫌悪感ないと思います。いや、どうだろ… 

 

うまく言葉にできない…

BDが届いて観直したらもう一度書き直そうかな。

 

今年ナンバー1はこないだGOKUDOに決めたんだけど、これも悩むとこでした。

ジャンルが全然違うとこだけど、悩むくらい良かった。

でも次回作に期待という点でGOKUDOがやっぱ1位かな。

これは2位に…僅差の2位にしておきます。

 

しかし本があったら読みたいなと思ったんですが、脚本家が近所の人をモデルにしたオリジナル脚本で原作がないとのことで。

ノベライズされたらなーと思うんですが、元々が脚本なら描かれなかった部分とかもそんなにないだろうしな。

でも当時の脚本からだいぶ変えたらしいです。