忘れることに備える記録

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市民ケーン

Citizen Kane

制作1941年 アメリカ 119分
制作:オーソン・ウェルズ 脚本:オーソン・ウェルズ、ハーマン・J・マンキヴィッツ
キャスト:オーソン・ウェルズ、ジョセフ・コットン、ドロシー・カミ・ゴア、エバレット・スローン、ルース・ウォリック

奇才オーソン・ウェルズの最高傑作

映画史上燦然と輝く不朽の名作!

マスコミ界の帝王が残した謎の言葉は…

1941年、荒廃した壮大な邸宅でケーンは「バラのつぼみ」という謎の言葉を残しこの世を去った。その言葉の謎を解くため一人の新聞記者が調査を開始した。

オーソン・ウェルズの処女作である本作品は、1941年に発表されるや、アメリカ映画界に劇的な反響を巻き起こした。
時系列わ、飛び越え、幾人かの証言でケーンの人物像に迫る手法の見事さ、華麗な映像テクニックはまさに傑作の一言につきる歴史的作品となっている。


余りにも有名で、余りにも評価が高いので観てみよう、でも古典のジャンルだよねー…的な感じだった作品。
しかし名作ワンコインコレクションみたいなやつの未開封の新古が150円程で売ってたので購入。

正直ね…開始10分くらいで観るの諦めようかと思った。
映像はさ、古い作品だから仕方ないと思ってたよ。
しかしさ、字幕はもうちょいどうにかならんのか…
20を廿で表記するのはまぁいいよ、一応教養の範囲内かなって思うし。
でも最近じゃ目にしないような略字はちょっと…
「にんべんに力」で働くとか、選挙の選がよくわからんくなってたりとか…
そして極めつけは字幕の色。
背景が白かろうが文字は白!とことん白!
もちろん背景白い時は見えない、え?見えないよね?ってくらいに見えない。
しかしそんなのお構い無しに進んでいく。
え?読めてないって!って思いながらも進んでいく話…
何度か一時停止して目を凝らしたりしたけど、途中からはもういっか…とすら思った。

そんな状態で開始30分くらいが地獄、イライラすらしてくる。
名作?知らんがな!まともに観れるようにしてから出直してこい!
くらいにイライラしてた。

だけど、我慢しつつも観ていくと自然とそんなんどうでもよく…は言い過ぎだけど許せるようになってくるんだよね。

話もなかなかでしたが、やっぱ映像的な面で傑作ですね。
この時代でそんな編集、撮影ができるんだなーと感心。
今では当たり前のような技法とかが普通に出てくるので、逆に違和感なのです。
そして色々な方が考察しているように、1シーン1シーンに心理描写とかが見てとれるような考えられた画面構成。
あと影の使い方が本当に見事。
あんま書くとネタバレに入りそうなので後半で。

勿論ストーリーの面でも古さを感じませんでした。
こちらも今ではなんてことないでしょうが、主人公が亡くなってから物語が始まり、そして主人公と縁のあった者達の語りによって主人公の人となりがわかってくるというアプローチが綺麗にまとまっています。
プラス「バラのつぼみ」の謎解きですから、なかなか見応えはあるかと。

ハリウッドで25歳の新人が撮った…となると才能を感じずにはいられませんね。
しかしこの作品のせいでオーソン・ウェルズはその才能を認められつつも成功を収められないのですが、それはまた後々。
勿論、役者としてのオーソン・ウェルズも良かったです。

最初の退屈さと字幕の読みにくさを我慢すれば観て損無しの作品だと思います。
特に映画撮りたいなーとか映像関係に興味のある方は是非。教科書的な存在になると思います。
個人的には好きなのであまり言えないとこですが、ゴダール作品より多く学べるかと、特に一般的なものを。




以下ネタバレあり








とりあえず始まってすぐやたら耳につく言葉。字幕では「上都(ルビはザナヅー)」
ケーンは上都で寂しい最期を迎えた、という説明をしてくれてるんだけど、上都ってなんぞや。ザナヅーってなんぞや。モンゴルなんか。
ここからもう心が作品から離れていくのが自分でわかった。
読みにくいし。
そしてケーンの人となりと言うか、説明、説明、結構長い間説明…
た…退屈…
ここらへんでもう停止押そうか本気で悩んだ…
でも折角買ったわけだし…と携帯いじりながらチラ見しつつ。

しっかり観始めたのは新聞社を買い取ってから。
ここらへんから映像もグッと魅力的に感じ始めて。
特に宣言書を書くケーンの姿がこの映画の中で一番おお!ってなった。
新聞社を我が物とし、これからメディアを牛耳っていく始まり、意気揚々とした若者のシーンなのに、宣言書を書いてるケーンには濃い影がかかっているのです。表情は全く見えず。
しかも結構長い間。
ケーンのこれから進む先を暗示しているようで、なんとも不気味なシーンとなっています。
このシーンを観て「おお…」ってなってからはこの作品の影の使い方の上手さに気付き、映像に重きを置いて観てた。
この作品の撮影に関してはパンフォーカスが有名だと思うんですが、本当パンフォーカスが見事に使われています。
トーキーで、動きもある。今見てもそんなに違和感はないかもしれません、画質の悪さを除けば。
本当に教科書的存在です。カメラワーク然り、影の使い方とかもフィルムノワールを彷彿させるし。


しかしこの作品を1番?楽しむ為には、ハーストのことを知ってから観ることでしょう。
そう、このケーン、実在した新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルにしてるのです。
しかもハーストがご存命中にこの映画を作ったもんだから、そらハーストも怒りますわ、激おこですわ、とういうことであの手この手でハーストから妨害行為を受け興行的には失敗、アカデミー賞でもブーイングを受け、後々ハリウッドで映画が作れなくなり、資金集めに奔走する映画人生を歩むことになるわけで。
1本の映画で大絶賛されつつも大ブーイングも受けるという相反する評価を受けたわけで、まぁ後世ではこれ以上ないくらいの評価を受けているので良いっちゃ良いのかもしれませんが、ハーストを敵に回さなければもっと順風満帆な映画人生を過ごせたでしょうに…

とりあえずこのハーストという男。
どんな男かはこの映画を観ればわかります、そんくらいケーンはハーストです。
「モデルにしたなんて言いがかりですよー」なんて通じない程にハーストです。
政治家になろうとするも市民の心が掴めず、そこから新聞王になるんですが、アメリカのメディアは全部彼の手の中、と言っても過言じゃないくらい、新聞社、雑誌社、ラジオ局を買う。
そんで何をするかって情報操作だよね。
戦争を仕掛ける為に記事をでっち上げたりしたとか…
まぁそんなハチャメチャって言葉じゃ足りないくらいの人間なのです。
このハーストについてはもっと詳しく説明してくれてる方が沢山いるし、ドキュメンタリー映画的なものもあるのでそちらをご覧ください。

でも色んな人にあーだこーだ言われながらも自分の好き勝手やってきた男が、自分の人生をモデルに映画を作られたからってそこまで怒るのか…ってとこだけど、その問題のキーワードも「バラのつぼみ」になるのです。
ハーストには若い愛人マリオンがいたのですが(もちろん映画内にもいます)、どうやらその愛人マリオンの性器をバラのつぼみと呼んでたとかなんとか…という超しょうもない話がありまして。
ここでこの市民ケーンを振り返ると、「愛人に捨てられたケーンが、1人取り残された豪邸で『バラのつぼみ』と謎の言葉を残し亡くなる」という話。
そう、愛人に捨てられてなお死の際でも未練がましく愛人を求める男の話。
これは怒るよね、怒るわそら。
この話を知った時は「しょーもな!笑」って感じだったので、当時の人達からしたら大爆笑ものですよね。

オーソン・ウェルズ…恐ろしい男です…笑

しかも別にハーストの傍若無人っぷりを暴きたいとか糾弾したいって理由でこの映画を作ったわけではなさそうで。
ただ単に「面白そう」的な感じでメディア王を敵に回してしまう性格だったようです。
その後苦労するわけですが特別苦と思ってなかったとか…
まぁこの後にも役者としても名作を残すのでそこまで落ちぶれたわけではないと思いますが。
ってことで名作中の名作「第三の男」が実はまだ未見なので近い内に観たいと思います。


しかしオーソン・ウェルズというと「エド・ウッド」(ティム・バートン監督)で、資金集めに悩むエドが憧れているウェルズに偶然会って「自分が作りたいものを作る為に戦う」的なことを言われるのですが、ウェルズの背景も知るとグッとくるシーンですよね。
まぁこのシーンはこの映画の脚色で、実際のエドはウェルズに会うことはなかったらしいですが。
バートン作品はあまり観ていない私ですが、「エド・ウッド」はとても好きです。

市民ケーン [DVD]

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一応書き切りましたが、これ実は観賞してから結構経ってます。ネタバレのとこまで書いて中々進まなかった…
なのでちょっと忘れてたり記憶が間違ってるとこもあるかもしれません、すみません。
先週の木曜日に「オオカミは嘘をつく」を観に行こうと思いつつ雪の為観に行けなかったので、下書きに入れたままだったこれをチマチマ書いていました。
「オオカミは嘘をつく」はまだこれから順次公開っぽいので他の映画館に観に行きます。
「グランドブタペストホテル」のアンコール上映も行きたかったのですが日程が合わずに諦めた…のですが、まさかの再アンコール上映が決まったので年明けくらいに観に行ってきます!
ってことでそろそろ2014年映画まとめを書こうと思いつつ、なんとか年内に「ゴーンガール」を観に行って、それを観てからまとめたいな、と画策中。
しかしこの時期の1人映画館はなかなか気が進まない…なんとか時間見つけていきます…