オオカミは嘘をつく
BIG BAD WOLVES
制作2013年 日本公開2014年 イスラエル 110分
監督:アハロン・ケシャレス、ナヴォット・パプシャド
キャスト:リオル・アシュケナージ、ツァヒ・グラッド、ロテム・ケイナン
恐怖と憎悪に満ちた3人のオオカミたちによって繰り広げられる巧妙に作り上げられた、スリリングで予測不可能な展開と結末。
森の中で起こったある凄惨な少女暴行殺人事件。
刑事ミッキは捜査を進めていくうちに最重要容疑者を特定する。それは一見温厚に見える宗教学の教師ドロールだった。ミッキは不法な取り調べを行い、その動画を偶然ネット上に流されたため捜査は中止に。
しかしドロールの追跡をやめないミッキ。そこへ割り込んできたのは、犠牲者である少女の父親ギディだった。彼は法律で裁かれないドロールを自らの手で裁くために周到な復讐計画を練っていたのだ――。
物語は徐々に取り返しのつかない方向へと進み、3人の男たちは破滅へと向かう。
そして最後の1カット、その衝撃はあなたの想像を必ず裏切るだろう。
観てきました、ようやく。
本当はセンチュリーシネマに観に行こうと思ってたんですが、観に行こうと思ってた日が最終日前日、なのに雪が降りまして行けず…
観たいんだよなーでもなーと思ってたところユナイテッドシネマで上映と知り、行ってきました、ユナイテッドシネマ豊橋に。
遠かった!でも久しぶりにこんなに大きなシネコンに行って少しテンション上がりました。いやー、でかかった!全18スクリーンて!規模凄いなー。
そしてこの映画の上映スクリーンは300人超の収容人数なんですが平日の夕方ってこともあってか観客は私も入れて3人。3人て。でも3人とも1人客だったから良かったかな。2人と1人だとなんか寂しいし…
遠かったですが、思ってたより早く着いたのでまた行ってみようかな。駐車場代かからないし。伏見ミリオン座の時は駐車場がネックなんだよね。こないだなんて映画代より駐車場代のが高かったし…(笑)
でもミリオン座系列が上映開始が1番早いしなー。
で、この映画ですがタランティーノが今年(去年)1番だと大絶賛したってのが売り文句だったんですが、ぶっちゃけタランティーノ絶賛ってあんま信用ならんって言うか、タランティーノのセンスちょっとズレてるしなーって期待はあまりしていなかったんです。
個人的にタランティーノ作品ってあまり…ですし。
でも予告に少し惹かれまして。イスラエル映画ってのも未知の世界で興味が。
結果としては、予想より良かったです。
最初はあらすじから「少女の凄惨な姿が映るからR18なのかなー」って思ってたんですが、拷問シーンが規制シーンなんですね。
個人的にはそんなでもなかったですが、少女が性的暴行受けてたり拉致とか監禁とかが規制対象になるんですかね?グロに関すれば最近はR15でもそこそこですもんね。
ストーリーは??なとこもありましたが、確かに最後に!とはなりました。
なのでグロシーン目的の方にはあまりオススメしませんが、あまり期待せずに行く分には楽しめるかもーって感じです。あと、結構笑いどころも多かったので、そういう点でも楽しめるかもしれません、ブラックジョーク的なのですが。
以下ネタバレあり
子供たちのかくれんぼから始まります。スロー映像がなんか怖かったわ。
あとイスラエルにもかくれんぼってあるんだなーって思いました。
で、少女が消えて、次のシーンでもうドロールを容疑者としてミッキが暴力的な取り調べをしている。
ドロールがなんで容疑者とされているのかは全く出てこないです。
ただドロールが最重要容疑者で、でも確証はないってことだけわかります。
でもミッキは絶対にドロールが犯人だと思ってる。
観客はなんでドロールがこんなに疑われてるのか全くわからないです。
そして本当に善良そうに描かれているんです、ドロールが。
そしてミッキは偏ってるというか思い込みの激しい風に描かれています。
最後まで観て、これが実に見事だったと気づきます。
ドロールが何で疑われてるかなんていらないんです、むしろあってはいけないんです。
ミッキに感情移入したらダメですし、ドロールはあくまで不当に容疑をかけられている同情の対象でないとラストが活きてこないからです。
この映画は謎解きではないです。サスペンスであってミステリーではないのです。
なので騙されてナンボなわけですが、ラストまで観ると「ああ、あのシーンは」と思えるようにはなっています。
いや、一部は実際観てる時に?とはなったんですが。
特にミッキがドロールに家の前で張ってて、ドロールがゴミを捨てにくるシーン。
少女の首が見つからないって状況で犯人だと思われる人物が黒い頭部大のゴミ袋を捨てに来たらまず怪しいでしょ。
でもミッキはゴミはスルー。「確かめないんか」って心の中で突っ込んだよ。
いや、実際はあれが本当に頭部なのかはわからないですが、多分そうですよね。
あとバレエ教室のシーン。
ドロールの娘を迎えにきたのかと思わせるシーンなのですし、実際そうなんだろうなって思いましたが、ここにもそこはかとない違和感。
ドロールはバレエ教室の扉の前で電話をしていて、この扉が一部ガラス。中の少女(娘だと思われる)と目が合うものの、少女の表情が父親を見るものではないんですよね。
ん?となるものの、娘の誕生日を祝いたいっていうドロール、次のシーンではドロールの自宅で手作りのケーキにロウソクを立て少女に吹き消させているので「ああ、やっぱ娘か」と半ば無理やり納得させられた感じでしたが、これも後々納得。
他にもちょっとしたヒントというか、ドロールへの不信感を抱かせるシーンはあるのである意味フェアな作品だと思います。
この作品は善と悪、特に悪についての映画だと思いますが、そういう点ではとても良くできています。
拷問シーンに目を奪われがちになるかもしれませんが、結構考えることのできるストーリーでした。
ドロールとミッキに関してばかり話しましたが、ギディは復讐に取りつかれたぶっ飛んでしまった人。相当娘が大事だったんだなーと思ってたんですが、最後の方で娘の迎えをスッカリ忘れ浮気に興じてたことを自白。なんか、娘の頭を探したいってのは勿論あるんでしょうが、それは娘への純粋な愛故ってわけでもなさそうだなーとなりました。
そしてギディのお父さん。最初は普通の人かと思うんですが、急に乗り気になる。火あぶりの時に昔もやってたっぽいこと言ってたので、そもそもそういう性質のある人なんでしょうね。ってか、犯人と同じ手口で拷問するってギディは言ってたのにアッサリと父の火あぶりを受け入れるんだよね、もうこの時点で犯人の手口云々は疎かに。
あと1番謎なのがギディの新居の傍に住んでいるんだろうアラブ人の男性。エンドロールでも「謎の馬の男」的な役名だったと思います。イスラエル人にとってアラブ人は悪人ということみたいですが、この人は善人(寄り?)に描かれています。急にギディの庭に入ってきたり何か嫌な雰囲気を出すんですが、普通の人です。ラスト辺りで彼がミッキに言うセリフがこの映画のテーマでもあるんでしょうね。
「アラブ人は全員殺人犯だと思っているのか?」的なことだっだと思います。
偏見とか先入観とか噂とかそういうのだけで本質はわからないんですよね。
ラストでミッキの娘も誘拐されたって知ってミッキがギディ宅に戻るシーンはてっきり「そいつは犯人じゃない」(娘が誘拐された、つまりしばらく一緒にいたドロールは犯人じゃない)ってことかと思ったんですが、これもガッツリ裏切られました。むしろ私が時系列をちゃんと把握できてなかっただけでしょうか…
ギディに首を切られ瀕死のドロールに「俺の娘をどこにやった」って詰め寄るシーンでようやく「ああ、本当にミッキはドロールが犯人っていうほぼ確実な捜査をしたんかな」って思えました。
そして死に際のドロールの表情。ひぃぃぃぃってなったよ、鳥肌立つかと思った。滲み出ない狂気って怖いよね。
で、最後の最後でネタバレ的にドロールの家が映り、そこで捜査をしていたミッキの後任刑事が「何もありません」って署長に電話を入れその場を離れるシーン。
しかしカメラが移動すると壁の向こうにバレエ姿でベッドに倒れている少女。
本当にドロールが犯人でしたっていう念押しなのですが、隠し部屋?に気付けない警察って…ってなりました。
そんなもんなのかな?まぁあの部屋の入口どこやねんって私も思ったけど。
しつこいようだけどこの映画は如何にドロールを善人に見せるかが肝だからドロールが隠し部屋に入るシーンなんて作るわけにはいかないしね。
ちなみにこの作品で1番好きなシーンはギディがケーキを作るシーンです。鎮静剤入りのお菓子はいらないって言ってたギディが何故かケーキを手作りするんですが、それがまさか後の笑いどころに繋がるとは…。お父さんが固形物を探すシーンで「マジか(笑)」と思いましたが。
このケーキ作りのシーンがとてもポップで、これも笑いどころの1つです。さっきまで拷問してたおっさんが楽しそうにケーキを作るんです、しかもBGMはかの有名なバディホリーの「エブリデイ」。
なんてポップなんだ!危うく笑いそうになりました。
いいシーンだったなー(笑)
あと映画が終わってから他のお客さんに「最後の人って誰ですか?」と聞かれたのもビックリ面白かった。確かにミッキの後任刑事は出番少なかったしね、最初の方だけだし。いつも店員さん以外とは一言も発せずに帰ってくるだけなので、こういうのもホッコリしますね。他人にチキンな私は残念ながら話しかけるなんて高度なことできませんが。