忘れることに備える記録

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第三の男

The Third Man

制作1949年 日本公開1952年 イギリス 105分

監督:キャロル・リード

キャスト:ジョゼフ・コットンオーソン・ウェルズアリダ・ヴァリ

第二次大戦後のウィーン。

親友のハリー・ライムの招きでこの街を訪れた作家のマーチンは、到着早々、ハリーが死亡したことを知らされる。

ハリーの死には三人の男が立ち会っていたと言うのだが、その三番目の男の正体を追って、マーチンは独自の調査を開始する。

 

 あまりにも有名な映画、でもあまりにも有名過ぎて逆に観なかった映画。

今年は昨年から引き続き、そういうのを観ていこうと思っております。

題して「2015年、ルーツの旅」

その記念すべき1作目はこれ。「市民ケーン」を観た時に観よう!と心に決めたこの作品。

結果から言うと、素晴らしかったです。

やはり名作は名作なのですね。

マジで文句の付けようがない位の。さすが名作。

あ、確か書き忘れてましたが「6才のボクが~」も個人的に文句の付けようがなかったです。

それは置いておいて。

 

ディスクの最初に淀川さんの解説が入ってる淀川さんセレクションを借りてきたのですが、いいですね、この作品を観る前に淀川さんが解説してくれる感じ。

日曜洋画劇場を思い出します。

淀川さんと映画の趣味はそんなに合致しなかったりするんですが、でも淀川さんは好きですね、やっぱり。

最近CMでポリゴンの淀川さんが喋っているのを観てジーンときました。

ちなみに「男しか出ていない映画に駄作なし」という名言は非常に同意しております(笑) 

あと「どんな映画にも見どころがある」という考えも好きで、私もできる限り良いとこ探しをするようにしています。

って淀川さんの話をする回ではないね。

この解説の中で

これは私は観てあまり立派なので驚きました、と同時に少し憎らしくなった。

 

この作品が本当の映画の教科書だということで、私惚れ込みながらも、あんまりにも隙がない奇麗さに、ちょっと嫌気がさしたぐらいの、これは名作です。

 

もしもこれ、今初めてご覧になる方があったら、どんなに驚かれるでしょう。

映画は美しい、映画は心を本当に表現するもんだということがおわかりになると思います。『第三の男』、怖い映画ですよ。

 と仰っておられるのですが(だいぶ間割愛)、本当にまさにこれ。

本当に隙がない。どのシーンをとっても、キャストも、脚本も、音楽も。見事としか言いようがない程の。

なんか悔しくなるくらいです(笑)

私はその昔1本だけ映画を作ったことがあるのですが、って言ってもホームビデオで出演者4人+友情出演2人(笑)、1時間ないくらいの。

こういう映画観てから作れば良かったと思う、マジで。

その作品のビデオ(元のテープとダビングした2本)が、又貸しに又貸しを繰り返す内に紛失したのは幸か不幸か…確実に観れるもんじゃない(笑)

 

ってなんか今回話がそれすぎですね、そろそろお口チャックしときます。


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The Third Man / 第三の男 - YouTube

予告編はないので、かの有名な曲を映画の映像に乗せた素敵な映像を。

 

 

 

以下ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

いやー、本当に見事な作品でした。繰り返し言いますが。

非常によくできたサスペンスです。

親友に誘われアメリカからウィーンを訪ねる小説家。

着いてみたらいきなり親友のお葬式です。

しかもその親友は何か犯罪をしていたらしく警察は「殺されたとしても事故だとしても死んだことに変わりはない」と言う程。

しかしやはり親友のことは信じている。マーチンは警察と対立?しながらも第三の男について調べていくんですが、手掛かりになる男は途中で殺されてしまう、しかも自分に容疑を掛けられてしまう。

そんな中、死んだはずの親友が自分の前に姿を現すのです。

そして警察に親友の悪行を聞き、親友と正義の間で揺れるマーチン。

親友の美しい恋人も気になる。

このマーチンの心の機微がいいですね。

 

そしてオーソン・ウェルズ

彼目当てでこの作品を観たと言っても過言じゃない、でも彼は作品の中盤以降しか出てこないです。

しかしなんとまぁ印象的な演技をするのか。怪優と呼ばれるのも納得ですね。

ウェルズ演じるハリーの印象的なセリフである「鳩時計」のくだり。これはウェルズが考えたとか。

ちなみにプロデューサーはウェルズを使うのに反対だったとか、でもキャロルがゴリ押ししたとか。いや、これはウェルズ使ってよかったよね、結果としては。

しかしやっぱウェルズには潤沢な資金でもう少し映画を撮ってほしかったなー、観たかったなー。

 

ヴァリ演じるアンナ、その強情とも言える感じ、好きじゃないわーと思いましたが…

なんか私好きじゃないわーな女が多すぎますね。いかんいかん。

でもその一途さ、愛した人が悪者だろうが愛し続けるその姿勢は美しさを感じました。

だって彼女は彼のしたことが悪いことであり、彼がどうしようもない悪人なのはわかっているんです。そういう理屈でどうにかなるもんじゃないんでしょうね。

そしてかの有名なラストシーンに繋がるのですね。

枯葉舞う真っ直ぐな一本道、彼女を助けたい(つまり俺のとこに来い)マーチンを一瞥もせずに前だけを見て歩いていくアンナ。

彼が死のうがなんだろうが、ハリーを愛し続ける覚悟がそこにあるのです。

 

このラストシーンはあまりに有名過ぎるシーンなので「きた!」って感じの気持ちでした(笑)

個人的にベストシーンは…

やっぱりハリーが死ぬシーンですかね。

下水道で追い詰めて、銃撃、撃たれながらも逃げようと地下から地上に手を伸ばすハリー、しかし追ってきた親友を見てのあの表情。

あの表情に鳥肌立ちました。ソワーってした。

 

アンナの飼ってる猫がマーチンに懐かなくて「彼(ハリー)には懐いてたわ」ってシーンからの、暗闇にいる人影に「誰だ、出てこい」と呼びかけ、その暗闇にいる男の足元にはアンナの猫がすり寄っている、っていうハリー登場のシーンも凄く良かったです。

本当に影の使い方が見事で。THEフィルム・ノワール!みたいな。

この猫の使い方も良かったです。ハリーの仲間たちの結びつきを犬を使って表すところも良かったし、動物の使い方もうまかったな。

本当に無駄なシーン、無駄なものが一切なくて、観れば観るほどにグッとくる名作だと思います。

 

話の3割くらいは字幕も出ないドイツ語で、何を言ってるのかマジでわからないのに、それでも本当に面白く観れるこの感じ。

 

完全にお手上げ、白旗。

映画好き、またはそんなに好きじゃない人にも「観るべし!」と自信を持って言える1本でした。

 

 

 

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