青天の霹靂
青天の霹靂
2014年公開 日本 96分
監督:劇団ひとり
人生は、喜劇だ。
笑いと、たぶん一粒の涙の物語。
場末のマジックバーで働く、さえないマジシャンの轟晴夫。ある日、彼は10年以上も関係を絶っていた父親・正太郎がホームレスになった果てに死んだのを知る。
父が住んでいたダンボールハウスを訪れ、惨めな日々を生きる自分との姿を重ね合わせて涙する晴夫。
すると、突如として青空を割って光る稲妻が彼を直撃する。目を覚ますや、40年前にタイムスリップしたことに愕然とする晴夫。
さまよった果てに足を踏み入れた浅草ホールで、マジシャンだった父と助手を務める母と出会い…
ウェス作品にやられてたので、違う系統の作品を…と思って借りてきたもの。
芸人監督作って鬼門と言うか、地雷と言うか…そう思ってた、いや、まだ思ってるんですが、これは良い噂ばかり聞くし、劇団ひとりのコントは大好きなので観てみることに。
結果、なかなかの良作でした。
笑えて、感動もする。
王道って言うか、ベタなんだけどそのベタさがいい。良い意味でも悪い意味でも裏切らないっていうかね。
それを96分に綺麗にまとめてあって良かった。90分映画っていいよね。
劇中で劇団ひとりがまんま劇団ひとりで笑った。チンさんとか普通に劇団ひとりのネタじゃん(笑)
まとめると、劇団ひとりのコントを映画にしたって感じで、劇団ひとりのコントが好きな人にはオススメです。ちなみに私の好きなコントは「死なすもんか」です(笑)
以下ネタバレあり。
大泉洋の役がめっちゃハマってました。
さえない、みじめな男。それを誰かのせいにしないとやってられないような男。
合うねー。
父親と幼少期の自分の写真を見て「生きるって難しいなぁ、毎日惨めでよ…俺なんの為に生きてるのかわからなくなってきた」って土手で泣くシーンが堪らなかったな。
別にそういう風に思ったことはないんですが、それでも胸にグッとくるのは、この映画自体が直球勝負だからですかね。最近は考える系の映画とかが多い中、こういう何も考えずに楽しめるやつもいいですねー。
お母さん役に柴咲コウってのもハマってましたね。
劇団ひとりが「芸人の嫁は強いイメージのある人がいい」的なことを言ったらしくてこのキャスティングになったらしいですが、ぴったりでした。
しかしまあ内容はベタに次ぐベタだったな。
自分を捨てた母親に、浮気をしたしょうもない親父、だから自分の人生は惨めだって思ってる男がタイムスリップして自分の生まれる前の両親に会う。
そこで知る両親の本当の話。
自分を産んだら死ぬかもしれない母、それを聞いて父に「おろせよ、どうせしょうもない子供なんだから」って言うシーンも、想像できるんですが、それでもグッとくるんだよね。
でもやっぱ1番記憶に残ってるのは病室で柴咲コウと大泉洋が話すシーン。
未来が見えるっていうのを信じてる柴咲コウが、自分の子供の未来を教えてって言って、大泉が少しだけって言って、自分と父親の話をする。
そうすると柴咲コウが「私は?」って。まさか、死んでますとは言えないし。
そこで大泉が言うのが「生きる希望です」って。
あんだけ人生に絶望していた男が、両親を見て「生きる希望」を見つけたっていう、まあありがちなんだけど良いよね。
そんで柴咲コウがお腹に向かって「大好きよ」って言って、お腹を蹴られたから「聞こえたの?」って泣きながら笑ってるシーンも良かったんですが、その横で「聞こえました」って静かに号泣してる大泉洋が良かった。
なんかうまくまとまらないけど良い家族の映画でした。
ラストは「バタアシ金魚」を彷彿させるようなスッキリとした終わり方。
多分この続きが観たいと思う人が大多数で、私もその1人ですが、この終わり方がベストだと思いました。
これは評価が良いのも納得です。
劇団ひとりの次回作も観たくなりました。
原作本の方も気になるんですが、これは映画が良い出来だったので(内容量とか)原作はもういいかなーという気持ちもあります。