忘れることに備える記録

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友よ、さらばと言おう

MEA CULPA

2014年公開 フランス 90分

監督:フレッド・カヴァイエ

キャスト:ヴァンサン・ランドン、ジル・ルルーシュ、ナディーン・ラバキー、ジル・コーエン、マックス・べセット・ドゥ・マルグレーヴ

刑事のシモンとフランクは長年コンビを組んできたが、シモンが車で人身事故を起こしてしまい服役。6年後、出所したシモンは職を得るも離婚してすさんだ生活を送る中、息子がマフィアの殺人現場を目撃したことから命を狙われていることを知る。

大切な息子を守るため、シモンは元相棒フランクの協力を得てマフィアに立ち向かう。

 

レンタル店でパケを観て「これは観たい!」となったもの。でも2週間程レンタル中で借りれず。ようやく帰ってきてたので即借りてきました。

想像以上の出来でした。太鼓判とは言わないけど観て損なしの佳作。

カヴァイエ監督のフィルムノワール3部作の最後なんですが、前2作も観たくなってきた。

ただ邦題がどうかしてると思うようなものなんだよな…でも観る価値ありそう。

シモンを演じたヴァンサンが主役の「すべて彼女のために

フランクを演じたジルが主役の「この愛のために撃て」

このタイトル…もうね…でも「すべて彼女のために」はハリウッドリメイクもされたらしいし。今度探してみよう。

ちなみに今作の「友よ、さらばと言おう」は個人的にはそんな嫌いではないけど、やはり原題の影も形もなくてどうかしてるものの1つだな。


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映画『友よ、さらばと言おう』予告編 - YouTube

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

始まって10分程は全然展開がわからなかったです。

とりあえず主人公は飲酒運転で3人殺してしまい警察を懲戒免職になり6年服役して待っていた家族を捨て離婚したクズ、ということは把握。

そんな主人公を気遣う元相棒フランク、そんな相棒にも心を開かないというか、延々と鬱屈とした雰囲気を出すシモン。そんなシモンにイライラな元妻アリス。

シモンもシモンだし、アリスもアリスでうるせーな!なんだこいつら!と私もイライラし始める…

 

とにかく説明がないんです。だから最初は「??」な状態。

でも観ていくと自然と理解できる。伏線とかじゃない、実は丁寧に丁寧に映像で説明してくれてたんだよね。

説明的なこととかの余分のものをなくして密度の濃い90分を作り出しています。

30分くらい経った頃には世界観に引き込まれてました。

 

シモンの息子がマフィアの殺人現場を見てしまうシーン、っていうか、このマフィアはツッコミどころが多いんだけど、まぁそこらへんは目を瞑りましょう。

そしてその現場を見てしまったが為に命を狙われるシモンの息子テオ。

そんな息子を必死に守ろうとするシモン。クズでも息子は大事なのねーと。

元警察官、現警備員という一般市民のシモンを手助けするフランク。こいついい奴だなーとしみじみ。男の友情っていいよね!(大好物、「スケアクロウ」とか「ノッキンオンヘブンズドア」とか)

そしてそこからは男2人対マフィアのアクションシーンに。

肉弾戦あり、カーアクションあり、見どころはTGV内での銃撃戦。からの、フラッフラになったシモンとマフィアボスの肉弾戦。もうグダグダなんだけどそれがいい。

結構既視感を覚えるアクションシーンが多いんだけど(アクション系をあまり観ない私でこうなんだから、アクション映画好きにはお腹いっぱい状態かもしれない)、それでも集中して観れたのはフランス映画特有の全体に広がるアンニュイな雰囲気もあるかもしれない。

 

1番の盛り上がり、ラストはマフィアに撃たれたフランクとシモンのシーン。

マフィアボスを倒して撃たれたフランクの元に戻ると、アリスに見守られる息も絶え絶えなフランク。

フランク良い奴過ぎだろ!自分も幼い娘がいる(しかも奥さんはいない)のに、なんで命懸けてまでこんなクズを…!と思った時に何故かフランクがシモンに謝り始める。

「すまなかった。申し訳ない」と。

それからはフランクの口はパクパク動いて何かを喋っているけど、光の点滅と音でこちらには何かわからない。しかしアリスの表情は普通ではない。

ってところでシモンの事故の日の回想に。

シモンが運転、フランクが助手席で帰ろうとしてる時にフランクが娘へのプレゼントを忘れる、「取りに行ってくるよ」というフランクに執拗に「行くな」と言うシモン。フランクがプレゼントを持って戻ってきたらシモンは運転席で寝てる。しょうがねーなーとフランクが運転席に代わり帰宅することに。

そして事故。

助手席のシモンに呼びかけるも反応なし。

相手側の車を見ると死んでいる。やっちまった…なフランクの目に飛び込んできたのは娘へのプレゼントと意識のないシモン。

母親もいないのに俺が捕まったら娘はどうなる…と思ったであろう(説明はない)フランクはシモンを運転席に移動。

回想終了で「(シモンが)死んだのかと…悪かった」と言って絶命。

事の真相を知ったシモンもアリスもテオも号泣。

でもそこに罪を着せたフランクへの憎しみはないんだよね。

この映画の原題は「MEA CULPA」、「私の罪」的な意味。シモンの罪だと思ってたものは実はフランクの罪だったという。そしてそれに対する贖罪の気持ちがフランクの行動理由だったんだろうな、と。

そして場面はフランクの葬式に。そこには固く手を繋ぐシモンとアリスの姿が。

一応ハッピーエンド?というところで、場面はもう1度変わる。

遠い夏の日、事故も起きる前の幸せな日々。海で楽しむ2家族。

アリスがカメラを向ける先にいるシモンとフランクの笑顔。

そしてホワイトアウトして浮かび上がる「MEA CULPA」のタイトル。

 

心にズシッときたよ…

でもフランクの行動理由は贖罪だけではなかった、そしてフランクを許した?シモンは息子を助けるのに協力してくれたからだけではない、と思えたから良かった。

そこには紛れもない友情があったはずです。

 

本当に説明がない映画でしたが、ちゃんと感じられるように作られていて見事でした。

フランス映画へのイメージがちょっと変わった。

 

個人的にお気に入りシーンは、フランクとデリヘル?(売春婦お持ち帰りかな)。

情事後に「普通にデートしようぜ、ディナーとかどうよ」と熱心に誘うフランクと、それを受け流しながら机の上に置いてあるフランクの職業が書かれた紙を見てそそくさ帰る女性。

ただそれだけのシーンかと思えば、後にクラブでマフィアと戦う時に「あいつ警察よ」とその売春婦が敵に素性をバラしてしまうという。

フランクがお持ち帰りさえしなければ…(笑)

 

あと、このフランク。

出てきた時から「この顔見たことある…どの作品に出てた人だろう…」と思ったものの、出演作を調べてもどれも観たことがない。

しかし20分くらい見て気付いた。

宇梶剛士だ!!!」

超スッキリした(笑)

激似ってわけじゃないんだけど、個人的に限りなく宇梶剛士だった。