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風に立つライオン

風に立つライオン

2015年公開 日本 139分

監督:三池崇史

キャスト:大沢たかお石原さとみ真木よう子萩原聖人鈴木亮平石橋蓮司

アフリカ医療に生涯を捧げたシュバイツァーの自伝に感銘を受け医師を志した航一郎は、大学病院からケニアの研究施設も派遣される。

日本に恋人を残しながらも、ケニアの地で充実した日々を送っていた航一郎は、現地の赤十字病院から1ヶ月の派遣要請を受ける。そこで彼が目にしたのは、重傷を負って次々と運ばれてくる少年が、みな麻薬を注射され戦場に立たされた少年兵であるという事実だった。

そんな中、病院に少年兵・ンドゥングが担ぎ込まれた。目の前で両親を惨殺され、麻薬でかき消されたという深刻な心の傷を抱えたンドゥングに、航一郎は真正面から向かっていくが…

 

『アメリカンスナイパー』か『博士と彼女のセオリー』を観に行こうかなーと前日から悩んでいたのですが、就寝前に急に『風に立つライオン』にしよう!と思ってこれに決定。

普段あまり選ばない映画なのに何故これを思ったのかは不明…

で、学生が春休みに入ってるし、朝の上映にした方がいいかなーと思って朝1番の回を目指してシネプレックス岡崎へ。

チケットを買う時は「まだまだ空席ばかりですよー」とお姉さんが言っていたので後部の中心の席を購入。開場して席につくと確かにまばら。

空いてるやん、いいねいいね。と思ったのも束の間、どんどん人が入ってくる。

結局半分くらいは埋まってたのかな?4割くらいかな?

その内8割くらいがおばちゃんでした。おばちゃんに囲まれた!状態でした(笑)

 

作品自体は良くも悪くも期待を裏切らないものでした。想像の範疇から出なかったのは少し残念ですが、こういう作品はそういうものだよね。さだまさしの原曲・原作があるわけですし。

まぁでも泣くよね。ええ、少しだけ泣きました。周りからも鼻をすする音が…「ズズッ…ズズッ…」と(笑)

 

私はさだまさしの曲を知っているので色々わかった上で観に行きましたが、若い方でどんな話なんだろーと思う方がいれば原作を読む必要もなく「風に立つライオン」を聴けばいいです。歌詞を見ればいいです。そういう話です。

面白かったとか良かったとかの判断はしにくいですが、邦画の安定感があったので観て損する作品ではないです。


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「風に立つライオン」予告 - YouTube

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大沢たかお、まだまだイケメンだなーなんて思いながら観始めました。

若い医師がケニアに渡って研究をしながら病人も診る。始めは同じアフリカでも安全な地区です。長崎大学の施設ですし。

しかし赤十字病院に行ってから変わります。まさに戦争。

大学の時にヨルダンの少年兵の話を少し聞いてたんですが、聞くだけでも苦しいのに映像で見ると余計きます…。地雷原を子供たちが手を繋いで横一列に歩き、後ろから離れて大人がついていくシーンとか…もうね。

平和のもとで暮らす私にはそれは映画とかマンガの中の作り物の話であって、実際にそれがあるってことが頭で理解できてもにわかに信じられていないのですが、それでも心苦しくなるんだよな。

赤十字病院に派遣された航一郎と同僚の青木はそこでの手術は主に「切断」と聞いて唖然とするわけですが、私も唖然です。

足を切断した患者が「治ったところでオレはどうしたらいい?」と聞くのですが「松葉づえで歩く練習をしよう、ここにはないけど良い義足もある」って言われて「そうか」と言うのにも唖然。いや、それしかないんでしょうが、あまりにも自分の世界と違いすぎて。

そしてそんな思いをして助かっても元気になったらまた戦場に戻っていく…やるせないな。

 

少年兵たちも同じなんですよね、だからこそ航一郎は「心はまだ治っていない」と言って退院させなかったのが、そしてそれを認めた院長が、すごく救いだったな、観てるこっちとしても。

航一郎の子供たちとのやり取りは本当に良かったです、笑える部分もあったし、だからこそ切なさが増す。

ンドゥングが似顔絵が描いてくれて「絵がうまいじゃないか」と褒める航一郎にンドゥングが「絵なんて何にもならない。俺は銃がうまい」って言うのに対して「人殺しを自慢する奴とは友達になれない」ってハッキリ言うシーンも…なんですかね、なんて言えばいいのかイマイチわからないのですが…心にくるのです。

そんなやりとりがあってからの、あのクリスマスの夜。

「9人も殺した俺が医者になんてなれるわけがない」というンドゥングに「お前は9人殺した。ならば一生をかけて10人救うんだ。未来はその為にあるんだよ」と。

ああ、過去の過ちや後悔とか、そういうのはこうやって乗り越えていくべきだな、と素直に思いました。~な自分には権利がない、とか言って逃げるのではなく。

この年でこんなことを学ぶとはね、自分がいかに色々なことをすり抜けて生きてるのかがわかりました(笑)

きつくて辛くて不自由で苦しくて、そんな状況でも幸せと言える何かが私にはないので、そういう人に問答無用で惹かれます。

最後、襲撃された時も銃を渡され「撃て」と言われてあの状況で「俺は医者だ」と言える、そういうものを持っている人はいいね。

いやいや、こういう感想を持つ話じゃないんだけどね!

 

全体を通して航一郎の感情は描かれていません。いえ、一本筋の通ったところは十分に描かれているのですが、胸の内はわからないのです。

でもあれだけ叫び続けていた「頑張れ」を、「頑張れは人に言う言葉じゃない、自分に言うものだ」と言ったり、ラストにさだまさしの「風に立つライオン」が流れることでわかります。

この人はこんな思いだったんだな、だとしたらあの時のあの選択は一体どれだけの気持ちでしたことなんだろう、とか…

幼い頃の誕生日プレゼントにサンダーバードのおもちゃをねだったのに母が何故かシュバイツァーの自伝をくれた、それを読んで医師になりたいと思った、それが人生を賭した仕事になるんだもん、人生って本当にわからないもんだよな。

 

あ、あと少し前に「バイオレンスばっか」って文句言ってすみませんでした、三池監督…

 

なんか少し自分もまともで良い人間になれる気がします(笑)

明日からもまた仕事頑張ろう…、誰かの為ではないけど…自分の趣味の為にも(笑)

 

さだまさしの原曲。

名曲だとは知っていたけど、なんて心にくる歌詞なんだろう。


さだまさし 「風に立つライオン」 - YouTube