インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌
INSIDE LLEWYN DAVIS
2013年制作 2014年日本公開 アメリカ 105分
キャスト:オスカー・アイザック、キャリー・マリガン、ジョン・グッドマン、ギャレット・ヘドランド、F・マーレイ・エイブラハム
1960年代のニューヨーク、冬。若い世代のアートやカルチャーが花開いていたエリア、グリニッジヴィレッジのライブハウスでフォークソングを歌い続けるシンガー・ソングライターのルーウィン・デイヴィス。
熱心に音楽に取り組む彼だったが、なかなかレコードは売れない。それゆえに音楽で食べていくのを諦めようとする彼だが、何かと友人たちに手を差し伸べられ…。
一時期Amazonがやたらと勧めてきたシリーズ。
なんかパケ画のあからさまなオシャレ感に「なんなんすか、そうすれば何でも見ると思わないでよね」という謎の反抗心を持って今までスルーしてきた作品。
いや、音楽もので、このパケのモノトーン感とか本当はめっちゃ好きなんですが、ルーウィンのモデルのデイヴ・ヴァン・ロンクについて全然知らないし、そもそもフォークソングってあんま好きじゃないし(と思ってたけど、最近になって自分のルーツが吉田拓郎にある可能性が出てきた…まぁこれは別の話)、コーエン兄弟も人気なようだけど実は私多分1本も観たことないし、実際あまり惹かれないし…みたいにウダウダ思ってたんですが、なんとなく借りてきました。
結果…
オスカー・アイザックの歌声すげー良い!!
ジャスティン・ティンバーレイクが歌う劇中歌の「プリーズ・ミスター・ケネディ」も良かった。
話自体は…うーん、この時代の音楽が好きな人には楽しめるし、デイヴ・ヴァン・ロンクの自伝を読めば今の10倍以上は楽しめる気もしますし、ただそこらへんに無知な私にとっては「才能はあるけど自分を曲げられない歌手(志望)の男のツイてない1週間の話」。これだけでした。
ツイてない男の話なら最近観た『コーヒーをめぐる冒険』の方が好きです。
うん、でもまぁ好きな人にはハマる作品だと思います。
それにオスカー・アイザックの歌を聴くだけでも価値があると思う。
コーエン兄弟最新作『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』予告編 - YouTube
以下ネタバレあり
って言っても本当に元ネタについて知らないのでネタバレもできない…(笑)
とりあえず元ネタのデイヴ・ヴァン・ロンクはボブ・ディランが憧れていたらしいってことで、映画のラストにはボブ・ディランらしき若者が出てきます。
つまり話としてはフォークソングで成功したかったルーウィン、元々デュオだったが相方のマイクは橋から投身自殺をしてしまう。1人でも売れる為に頑張ってみるが、うまくいかない。才能があるのに売れない。レコード会社に入っているが社長たちは何をしているのやら…。金もなければ家もなく知人の家のソファを転々としている。それでも泊めてくれる友人たちはいるし、過去のデュオのファンだという知人もいる。でもルーウィンは音楽で、フォークソングで成功をしたい。NYからシカゴまで相乗りとヒッチハイクで行き音楽プロデューサーに聴いてもらうが言われたのは「ユニットの後ろでやらないか」。それを断ると「キミは下手じゃないけど。相方とヨリを戻した方がいい(死んだことは知らない)」とアドバイスをもらう。結局NYに戻ってきて音楽を辞める決心をする。そこでまた色々あり、フォークソングなんて嫌いだ!となるものの、最後にマイクがいなくなってからちゃんと歌ってなかったデュオ時代の曲を披露して綺麗に終わり、かと思いきやラストにもう一悶着(笑)
この一悶着が良かった、これのおかげで作品全体が締まった気がします。
あ、最後のルーウィンのステージの後にステージに上がるのがボブ・ディランと思われる若者。
ルーウィンがあれだけ必死で成し遂げたかったフォークでの成功はこのボブ・ディランが成し遂げるわけです。なんともアイロニックな。
でも多分マイクがいなくなった時点で成功できないってルーウィンも気付いていたんだと思います。
結局才能があるけど成功できなかった男の話ですね。まぁそんな人はこの世の中、今でも五万といるわけですが。
そういう人には何か刺さるかもしれないです。
あとストーリーとしては古代ギリシャ文学の「オデュッセイア」のパロディでもあるらしいんですが、私はこちらも未読なのでなんともコメントできず…
検索すればこの作品と「オデュッセイア」の関連を説明してくれている親切で知的なブログはたくさん見つかると思うのでそちらをオススメします(笑)
個人的に好きなシーンは前述した「プリーズ・ミスター・ケネディ」のスタジオ風景。アルのパートがもうすごく堪らなかった(笑)
あとちょいちょいトリンドルに見えたキャリー・マリガンの恫喝シーン。綺麗な女性が口汚く罵ってくれます(笑)
まぁ私は2度目を観るならサントラを買って聴きたい、そういう作品でした。
そういやボブ・ディランと言えばやっぱ『チョコレート・ドーナツ』を思い出す。あっちもアラン・カミングの歌がすごく良かったな。
そして『チョコレート・ドーナツ』を観てから久々に聴いたディラン2の「男らしいってわかるかい」もやっぱ良い曲。ちょくちょく聴きたくなるね。
これは大塚まさじさん名義だけど。