忘れることに備える記録

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刺さった男

LA CHISPA DE LA VIDA / AS LUCK WOULD HAVE IT

2012年公開 2014年日本公開 スペイン 94分

監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア

キャスト:ホセ・モタ、サルマ・ハエックブランカポルティージョ、ファン・ルイス・ガリアルド、フェルナンド・テヘロ

失業中の元広告マン、ロベルト・ゴメスは新たな就職先が見つからず失意の日々を送っていた。そんなある日、郷愁に駆られ新婚旅行の思い出の地を訪ねた際に迷い込んだ古代ローマ遺跡の発掘現場で事故に遭った彼は、後頭部に鉄筋が刺さって身動きが取れなくなってしまう。

その模様がニュースで放送され、一躍有名人になるロベルトだったが… 

 

ってことでアレックス・デ・ラ・イグレシア祭2本目でございます。

正直パケ裏の紹介文を読んでもいまいちピンと来なかったんですが、観てみたら意外と面白かったです。

簡単に言えば被害者ビジネス(こんな言葉があるのかは不明)の話ですかね。 

紹介文がしっくり来なかったのはこういう文化が日本にはあまりない(私が知らないだけかも?)からでしょうかね。

何かの被害者がメディアの独占取材等を受けてお金を稼ぐという。

そういう広告業界・メディア業界を皮肉った作品のような、でもブラックコメディとしても結構笑いどころが多くて。むしろメディア関係だけではなく、市長・博物館長・救命隊員・医者・警備員・そして家族等色んな立場の人がそれぞれの事情で動いていて、そのやり取りがクスッときたり。

9割くらい博物館の遺跡の1シチュエーションであまり画面が変わらないんですが、それが良かったです。だからこそその場でワタワタする大人たちの見苦しさというか滑稽さが際立つ。

それにしても邦題はなんでこんなにダサいのか(笑)

原題は作中でもやたら繰り返される「人生のきらめき」ですね。まぁ『人生のきらめき』ってタイトルだったら余計に手に取らないですがね(笑)

『スガラムルディの魔女』はくだらないコメディでしたが、こちらは社会派ブラックコメディ。結構ジャンルが違うんで比べるのも難しいですが個人的にはこちらの方が好きでした。

ちなみに同日公開だったようです。どっちも凄い発想ではある(笑)
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映画『刺さった男』予告編 - YouTube

 

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

要は再就職できず将来に不安を抱えつつ、妻は優しく諭してくれるものの一家の大黒柱である責任から逃れられず元広告マンということもあり、たまたま起こった事故で自分の生死を売り物にしてしまおう!これで大金ゲットだぜ!な男の話です。

こうやって書くとなんて話だ…(笑)

旧友のつてを頼って面接に行くも無下に断られてしまって帰り道に衝動的な感じで向かった新婚旅行先で事故に遭い、「よし!これで被害者ビジネスして万々歳や!」って感覚が私にはわからないのですが、海外のこういうのをテレビで観たことはあるのでなんとなく納得はできます。

私はあの、この映画内でも出てきたけど被害者の名前とか書いて「〇〇と共に」みたいな横断幕を持った市民とかの感覚もよくわからないのですが。あれも日本人にはわからない感覚でしょうかね。

 

尊厳よりもお金が大事な主人公、人命よりも政治家生命が心配な市長、遺跡の方が大事な館長、責任が取れないということで動きが取れない医者達、死んだ方が独占インタビューに価値が出ると言い張るメディア関係者達、就職できなかったことによる自殺だと思われると企業イメージが心配だから今から雇おうと言い出す旧友の社長、お金よりも何よりも旦那の命が大事だと言い張る妻たちが94分ワタワタします。

冒頭のシーンが悲壮感ありつつも幸せそうだったので、観ていてツラくなってきます。ロベルトは「あなたの命が何よりも大事」と言ってくれる妻の言葉も届かない程、無職で金がないことに頭がいってしまっていて何とかして自分の命を演出して金を稼ごうとするのが…

妻の言葉にはどう見ても嘘がないのに。

でもお金って大事だしね、特に子供2人とも大きいし、娘には留学させたいって言ってたし。

ラストらへんで撮った独占インタビューの内容はメディア向けのものなんでしょうけど、ジーンときたな。

ロベルトはお金に執着したけど、それは家族の為だと思うとなんか責められないよね。でもじゃあそれを食い物にするメディア業界が悪かと言われれば、まぁ善ではないけど悪でもないよね、この場合。

なんでしょうか、結局不景気が悪いんでしょうか…(笑)

 

ってことで笑いながらも何か考えられる作品でした。

個人的に好きなシーンは息子のシーン。

ガチガチのヴィジュアル系の息子なんだけど、優しい子で(笑)

自分の息子がああだったらちょっと複雑と少し思ったけど、ロベルトは「若い時は無茶する、見守ることが必要」みたいなこと言っててなんかジーンときた。

ああいう父親だからあんな優しい子に育ったんだろうなーと。

「もし俺が死んだらそのブーツを脱いでくれ」ってロベルトに言われて本当にブーツを投げ捨てて裸足で歩いていくシーンも良かったな。ロベルトが「俺が助かったら~」って言わなかったのも良いね。

あとキャラとしてはクラウディオも好きでした。

 

あと嫁が冒頭の部分では超美人で可愛い!と思ったのにどんどん鬼に見せてくるから不思議(笑)

でも格好良くて優しくて強い良い女だったな。

ラストでジュラルミンケースを蹴飛ばすとこは個人的には『第三の男』よろしくスンと通り過ぎてほしかったような気も。まぁ私の好みなんてどうでもいいね。

 

ってことで『気狂いピエロの決闘』もやっぱ気になるな。

でもそろそろ『泣く男』とか『ケープタウン』とかも1週間レンタルOKになるかなーと待っております。

明日映画館にも行きたいけど美容院にも行きたいことを考えると…休みの日のみ48時間とかになってほしいです…

 

刺さった男 Blu-ray

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