忘れることに備える記録

観たり・聴いたり・読んだり

キッズ・リターン

Kids Return

1996年制作 日本 108分

監督:北野武

キャスト:金子賢安藤政信森本レオ山谷初男寺島進モロ師岡石橋凌

いつもつるんで、学校に行っては問題を起こしていた18歳のマサルとシンジ。ある日、カツアゲした高校生の助っ人にノックアウトされてしまったマサルは、ボクシングに目覚め、ジム通いを始める。

付き合いでシンジもジムに入門し、ふたりはボクシングの練習に没頭する。ある夜、ヤクザに絡まれたふたりは、若頭に助けられるが、その迫力にマサルは感動する。

高校生活も終わり、いつの間にかシンジはボクシング界の逸材に成長していた。だが、ジムにはマサルの姿はなかった。 

 

ってことで宣言通りの『キッズ・リターン』です。

『泣く男』がようやく1週間レンタルOKになってたんですが、全部借りられていまして…いや、想定の範囲内だから大丈夫です。なんか私めっちゃ『泣く男』が観たい人みたいになってますが、別にそこまで期待はしていないです…

で、『キッズ・リターン』。昔1回観たことがあるのですが、考えてみると15年くらい前、中学生の時に観たきりで…。通りで覚えていることが「安藤政信格好良かったな、金子賢も格好良いけど」なわけだ。 でも好きな映画として覚えているから不思議。

ちなみに私の1番好きな邦画は『バタアシ金魚』ですが、これも中学時代にたまたま観て、DVDを買って現在も何度も観ているくらい大好きです。このくらいの時代がなんか懐かしくていいんだよな(笑)

ってことで大人になって観た『キッズ・リターン』、とても良かった。さすがです。

中学の時にどう思ったかは覚えていないですが、大人になってから観るとなんか刺さるねー。久石さんの音楽も、キタノブルーな画面もとても良かった。

ディスク買おうかなって思うくらい。

そしてキャストが凄く豪華ですね、本当に。平泉成とか津田寛治とか大杉漣とか、あとクドカン(笑)若いけど顔つきはクドカン(笑)そんな人達がチョロッとだけ出てくるから笑える。

しかし、まさに青春な映画だったな。私の中で青春ってキャッキャッしたものっていうより、こういうイメージ。あと『バタアシ金魚』みたいに、恥ずかしくて痛いイメージ。そんな青春が大好きです。


f:id:ROUTE375:20150510015518j:image

 


キッズ・リターン - 劇場予告編 (Takeshi Kitano) - YouTube

 

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

しかしこの名作を今更どんなネタバレするんだっていう。

とにかく青春、子供から大人に変わっていく過程の、あのよくわからない焦燥感とか自分が何者なのかわからない感じというか、そういうのが溢れていて観ているこっちを簡単に自分のその時代に連れていってくれます。まさにキッズ・リターン

私は高校時代から一気に携帯普及率が上がったのですが、中学時代はこんな感じだったなーと。学校が終わったら友達と2ケツでプラプラして、さすがに喫茶店には行かなかったけどコンビニからのカラオケが定番の流れだったな。公衆電話で友達を呼び出したり、なんだろう、あの恥ずかしいけど懐かしい思い出たち…(笑)

 

で、そんな痛くも愛おしい青春に北野らしい不条理さをちょっとスパイスして、より一層痛々しくも愛おしい話に仕上げてあるんだよね。

なんとなく始めたボクシングで、意外と才能があって周りに期待もされて、でも他人の悪意に気付けずに悪い方に流されてダメになる。

流されるようにヤクザになって、それなりにおいしい立場になるも、しめられて失う。

別に2人が何かをしたわけではない(以前に悪いことはしているけども)のに、周りからダメにされる2人。まぁ流されたり、ダメにされる2人が悪いんだけど。

でも若い頃ってそんなもんだよね。

自分のせいでもあり、周りのせいでもある失敗なんていくつもある、でもそれが若い内だからやり直せるというか、立ち上がりが早く済むというか。

結局ラストの名言

「オレたちもう終わっちゃったのかな」

「バカヤロー、まだ始まっちゃいねーよ」

まさにそう、若い頃の失敗なんて人生にカウントされないんだよ、よっぽど。

 

しかしこの2人とは別に出てくる若者たち。

北京ゲンジ演じる漫才師志望の2人は対照的に描かれているんだけど、それとはまた別の方面で対照的に描かれているのがヒロシとカズオ。

それなりにマジメに生きてきて片想いを実らせたものの、同僚の誘いで会社を辞めて、新しくタクシーの運転手になるもそこでもうまくいかずに亡くなってしまうヒロシ。

ヤクザがよく来ていたラーメン屋の息子で、たまにタバコを買いに行ってお釣りをもらうくらいだったのに、いつの間にか組に入っていて2人殺しの罪を着ることになったカズオ。

この2人は始まる前に終わってしまう。

そういうパターンもあるんだよねっていう。

 

それにしても最初は本当死にそうっていうか死んでるような顔してチャリ漕いでたシンジがマサルと再会して学校の校庭を走っている時はどことなく楽しそうで、「終わっちゃったのかな」と言いつつも楽しそうで、きっとこれからこの2人がまっとうな意味での成功を掴んでいくことなんてよっぽどないだろうけど、でもここからまた始まりで、これがハッピーエンドだって思わせてくれる。

これから先、お金いっぱい稼いで成功してって人生が最高に幸せって思うようになるかもしれないけど、学生時代は(今でもまだ若干)金ないーとか言いながらしょうもないことして笑ってるのが1番幸せだったりしたんだよね。

2人とも成功と挫折を味わってるわけだから、次のチャレンジはきっともう少しうまくやるよね、そういうもんだよね。

ってなんとなく人生前向きになれる作品です。

 

で、これ続編?があるわけですが、キャストも全然違う、たけし原案の。

レンタル屋でも横に置いてありましたが、良い話を全く聞かないので今回はスルーしてきました。

うーん、でもやっぱとりあえず観ておこうかな。でもなー。

このキャストが最高だったからなんか気が乗らない…