忘れることに備える記録

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くちづけ

くちづけ

2013年公開 日本 123分

監督:堤幸彦

キャスト:貫地谷しほり竹中直人宅間孝行田畑智子橋本愛

知的障碍を持つ娘のマコを、男手ひとつで育てる愛情いっぽんは、かつては人気漫画家だったが休業し、すでに30年が経っている。

知的障碍者のためのグループホーム「ひまわり荘」で住み込みで働き始めたいっぽんと、そこで出会ったうーやんに心を開くようになったマコ。

しかしそんなある日、いっぽんに病気が見つかる。 

 

当時小耳に挟んで少し気になっていた作品。こってり忘れていましたが『キッズ・リターン』を借りる為に邦画コーナーに行ったときに見つけて借りてきました。

なんとなくのあらすじは知っていたので「泣くんだろうなーきっと」と思ってたんですが、予想以上に泣けた。

でも笑える部分も多くて、なかなかの良作でした。

で、こういう作品って必ず賛否両論出るわけですが、この作品なんて特に賛否でそうなストーリーでして、まぁ案の定評価とか見るとガッツリ割れてまして…

そのどっちの意見もわかるわけですが、映画作品として見て私は賛の方です。この展開を肯定するわけではなく、1つのストーリーとして見た時にそこに矛盾や納得のいかない部分はなかったので。

とりあえず貫地谷しほりの演技凄かった。件のソファのとこのシーンとか目に狂気すら感じた。彼女の作品ってほとんど観たことないけどちょっと気になる女優さんになりました。

そして原作・脚本が宅間孝行ってことで(舞台版もあるようですし)、堤監督も舞台的な感じを意識したんですかね。構成とかが舞台っぽくてなかなか新鮮でした。

個人的に観て損なしの作品かと。ただ近くに障碍者のいる方だと否になる可能性が高いかもしれません。


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映画『くちづけ』予告編 - YouTube

 

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

軽度知的障碍者の娘を持つ父親が、娘と共に2人で生きてきたが自分に末期癌が見つかり何とか娘を自分以外の場で生きさせようとするも、娘を手にかけ余命を終えるという話です。

こう元も子もない感じで書くととても救いがない。

で、先に逝く父が娘を1人で置いていけないと首を絞めてしまうのでそらまぁ否定意見出ますわな。

私もその直前、マコが「いっぽんが死ぬならマコも死ぬ」とか言ってる時は泣いてたのに実際にいっぽんがマコの首を絞め始めたら驚くくらいに涙止まったよ…予測はしてたけどそこは裏切ってほしかった。

勿論そんな行為は普通に否定です。でもこの映画を観ていていっぽんがああいう行為をしたのもわからなくもないなって思うわけで。

いっぽんはマコが自分が亡くなってからも生きていけるように色々考えてたじゃないですか。

昔男の人にホテルに連れ込まれてから男の人と2人になると怖がって暴れるマコの為に仕事とか色々と犠牲(いっぽんはこうは思ってないけども)にして「いっぽんもマコがいればいいよ」って言ってたけど、施設に入れることを決めて。

うーやんとマコが結婚するって言いだして、うーやんが暴れた時も「マコと結婚するのならしっかりしてくれよ」って言ったり。

いっぽんは自分がいなくなった後のマコを色々考えていたよ。

でも一気に色々とうまくいかなくなって。

施設に入れるもマコは施設から抜け出して「いっぽんと一緒がいい」って言うし、うーやんはグループホームを出て妹と2人で暮らし始めるし、グループホーム自体も運営も厳しいし一時閉鎖することになるし、事故ったグループホームの住人を自宅で面倒見ている運営者も大変だってことをこぼしていたし。

うーやんはまだマコと結婚するつもりだったけど、グループホームを出る時に妹が「大変だろうけどたった2人の家族ですから頑張らなきゃ!」って言ってて、そこに「結婚したんでじゃあマコのこともよろしくお願いします」っていっぽんができるわけないよね。今まで一緒に暮らしてきて大変な面を知っているからこそ。

グループホームの運営者も「何で言ってくれなかったんだ」と言ってたけど言えないよね。金銭面の話も大変さも聞いていたのに。

いっぽんは周りの人のことを信頼していなかったとかそういうのじゃなくて、周りのことを知って色々と思ってしまうからこそ言えなかったんだよね。

自分が死んだらきっと誰かが面倒をみてくれるだろうって、そんな不確定要素じゃダメだった。絶対に浮浪者にも犯罪者にもしたくない、その可能性が1パーセントでもあれば不安で仕方ない。自分の身体はどんどん病に侵されていく。

そんな中でとった行動として、この作品内の、いっぽんの行動として私はそこに意外性というか矛盾を感じなかったので、この作品自体に賛の方です。

 

しかしラスト、うーやんがマコといっぽんのことを待ってて「マコちゃんと結婚する」って言ってる中、なんだかんだで有耶無耶にして「結婚式やりましょう」ってなる流れが凄く嫌だった。

うーやんは妹が来なくて暴れるシーンとかはあったけど話が通じないわけではない軽度の知的障碍者っぽいのに説明もせずに待たせたままっていうのが個人的には納得できない。健常者の自己満的な感じが。あそこであれを結婚式って言うのもよくわからず。

 

って感じでまぁ不満もありつつ色々と思うことはあれど、2時間真剣に観れました。

そして橋本愛は個人的に怖くて苦手だったんですが、やはり何となく怖くて苦手です(笑)前程ではないけども…。

 

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