忘れることに備える記録

観たり・聴いたり・読んだり

12人の怒れる男

12 ANGRY MAN

1957年制作 アメリカ 95分

監督:シドニー・ルメット

キャスト:ヘンリー・フォンダ、リー・J・コップ、エド・ベグリー、マーティン・バルサム、E・G・マーシャル

17歳の少年が起こした殺人事件に関する陪審員の討論が始まったが、誰が見ても有罪と思えたその状況下で、ひとりの陪審員が無罪を主張したことから物語は動き始める… 

 

「2015年、ルーツの旅」をすっかり忘れている昨今ですが、1シチュエーションムービーの傑作として名高いこの作品が目に止まり借りてくることに。

1シチュエーションムービーということしか知らずに観たんですが、めっっっっちゃ面白かったです。

ミステリーでもあり、社会派でもあり、人間ドラマでもあり、すごく考えさせられるストーリーで。

登場人物も陪審員の12人と、犯人の少年がチョロッと、裁判所の人、検事がチョロチョロッと出てくるだけで、でもその少ない登場人物に個性があり、物語があり、その後ろにある人生も見れるんですよね。

本当脚本の妙が際立っていまして。

いやー、やはり名作は名作なのですね、観て良かった。

1957年の作品とは思えないくらい現代にも通じるストーリーで、陪審員が抱えるものや民主的な考え、そして「疑わしきは罰せず」のスタンスとか。

観たことない人には是非勧めたい1本でした。

 


f:id:ROUTE375:20150620211658j:image

 

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

父親を殺したということで捕まった少年の裁判員裁判が終わり、12人の陪審員陪審員室で彼の有罪・無罪を決めるために話し合う。満場一致での決議をしなくてはならず、でもどう考えても有罪だと思われる為、即有罪で決定するかと思いきや、無罪に挙げる人が1人いて…

という話です。

裁判が終わるところから作品が始まりまして、最初は観てるこっちはどんな裁判だったのか、どんな証言が行われたのかわからないのです。陪審員が退廷する時にそれを見る被告人の少年の表情がなんとも言えなくて、その表情に何がこめられているのか、観ていくうちにそれがわかります。

 

無罪を押す陪審員が「無罪を信じているのではなく有罪であるかが疑わしい」というスタンスで他の陪審員を説得していきます。

疑う余地もないと思われていた証言が根底からグラついていったり、その疑わしい証言も他人の悪意ではなくちょっとした自尊心や虚栄心といったものが働いた結果だったり。それにつれて他の陪審員も無罪に転じていったりします。

 

陪審員たちの人となりもそれぞれ違ってそれも観ていてとても面白いです。

流されやすい人、偏見の塊のような人、予定がある為に多数に合わせて早く終わらせようとする人、データを大事にしている人、私情を切り離せない人。そのどれもが「いるよねー」と思う人で物語にリアルさが出ています。

 

深読みを超えてもうひねくれていると言ってもいいくらいに斜め上に予想してしまうようになった私はヘンリー・フォンダ演じる陪審員が真犯人なんではないか。

良心の呵責なのか少年を無罪にしようとしたのではないか、ナイフも持っていたし…そんで少年を無罪にしてから例え嘘や不確かな証言をしたとしても証言者として法廷に立った人たちに制裁を与えにいくのではないか…とまで考えたけど、もしそうだったら名作になっていないだろうな(笑)もうミステリーとかじゃなくてホラー寄りになるよね…

 

とりあえず『12人の優しい日本人』も観てみたいな。

1シチュエーションムービーとしては『キサラギ』は観て面白かったなーとは思ったけど詳しく覚えていないんだよな。また観ようかな。

でも1シチュエーションムービーなら未見の『エグザム』と『月に囚われた男』が観たい。あとなんだっけ、電話ボックスのやつ、あれとか。

今回ようやく『殺人の追憶』を借りてきたので韓国映画強化月間は一休みしようかな。まだまだ観たい作品が多い…