忘れることに備える記録

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ショート・ターム

SHORT TERM 12

2013年制作 2014年日本公開 アメリカ 97分

監督:デスティン・ダニエル・クレットン

キャスト:ブリー・ラーソン、ジョン・ギャラガ―・Jr、ケイトリン・デヴァ―、ラミ・マレック、キース・スタンフィールド

問題を抱える子供のためのグループホーム「ショートターム12」で働くグレイス。グレイスは、新入りのジェイデンという少女を担当することになる。

グレイスは施設の同僚メイソンと付き合っていたが、ある日、妊娠していることが判明する。そんな中、グレイスはジェイデンが父親に虐待されていたことに気付き… 

 

噂の「満足度99%」の作品。気になりつつもちょっとテーマ重くね?って感じで先送りにしていたんですが、1週間レンタルOKだったので借りてくることに。

あっちゃんの映画本にも載ってたしね。

「満足度99%?どんなもんよ」とちょっと疑ってかかったんですが、良かったです。

重いテーマではあるんですが、ちゃんと救いがあるし、未来がある。

個人的には所々入るちょっとした小ネタ(小話?)が好きです。あれがあるからこそ重いテーマが少し和らぐというか。

職場での関係や恋愛、子供たちとの関わり、そして主人公自身の成長、そういう全てが良い具合にまとまっているので 、誰が観てもって言うか観た人に何かしらの思い当たるところっていうか心にくる部分があると思います。なので「満足度99%」も納得かな。

監督・脚本のデスティン・クレットンは新人監督なんですが、彼の次の作品も楽しみです。


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ショート・ターム - 映画予告編 - YouTube

 

 

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショートターム12で働くグレイスは恋人のメイソンとの間に子供ができるが、過去に父親に虐待され妊娠し堕胎した経験があり、グレイスはその自身の抱える悩み・過去を恋人にも打ち明けられずに抱え込み、母親になる決心がつかない。恋人のメイソンはグレイスが打ち明けてくれるのを待つが、彼女はそれを頑なに拒否し、堕胎手術を受けることをメイソンにも告げる。さすがのメイソンも怒るものの、父親に虐待され自身を重ねていたジェイデンに「いい母親になると思うよ」と言われ、心境に変化が生まれる…という話です。

 

監督自身が施設で働いたことがあり、その経験を活かしたらしいんですが、嫌な部分(個人的には部屋の隅々まで調べるところに必要だとわかってても嫌な気持ちが)もありつつも希望にあふれた内容になっていて、経験した人にしか書けないような内容だなと思いました。

登場人物全て重いものを背負っていると思うのですが、でも愛しい存在で、観ていて温かい気持ちになります。

主人公であるグレイス、その恋人のメイソン、そしてジェイデン、メインであるこの3人もいいんですが、個人的にはジェイデンに唾をかけられ必死にアルコール消毒する「恵まれない子供の世話をする」のもいい経験だと思い働き始めるネイトや、母親に対する不満をラップにのせ歌いながらも金魚を可愛がっていたり仲間の誕生日を祝ったりする心優しいマーカスや、人形に妹を重ねて大事にしている足の速いサミーが好きでした。

メインである3人の話の間に入る彼らの話が重い話を和らげてくれ(彼らの話も重いですが)、微笑ましく思えたりします。

ある種の興味で働き始めたかのように見えたネイトがサミーの人形を見つけて彼にそっと返してあげる場面や、冒頭では脱走する為に走っていたサミーがラストでは国旗を身に付け逃げる為ではなく走っている場面、そしてマーカスの後日談には本当にグッときました。

マーカスもジェイデンもサミーもそしてグレイスも人には言えない傷を抱えていて、マーカスはラップで、ジェイデンはおとぎ話で、サミーは人形遊びで自分の傷を騙していたけど、それを自ら受け入れ、人に話し、傷に向き合って立ち上がっていきます。グレイスは結局全てをメイソンに打ち明けたのかはわかりませんが、きっと前のように抱え込むことはしなくなったんでしょう、最後の方でカウンセリング受けてたし。

そしてラストのサミーは本当に希望そのもののような気がします。アメリカ国旗をマントのように身に付け冒頭と同じように脱走するものの、スローモーションになる画面を観ると彼は逃げようとしているわけではないことがわかります。

冒頭で「陸上競技でオリンピックに出れば?」とメイソンがサミーに言ってるんですが、それを考えると国旗を背負って走るのって金メダル選手とかですよね。サミーも人形との世界にこもっているのではなく、きっと自力で立ち上がったんですよね。それは勿論カウンセラーの行った「全ての人形を没収することでの自立」ではなく、「そんな中でも人形を自分に届けてくれる人がいる」という繫がりですよね。だから彼は国旗を背負って彼らの前を走ってみせたのだと思います。

そんな彼を追いかけるのは彼らの「日常」ですが、それは冒頭の「日常」とじゃ似て非なるものなんですよね。

すごく考えられた良い構成だと思いました。主人公の名前がグレイスってのもいいよね。ショートタームの彼らに与えられたGrace、それは与えられるものでもあり与えるものでもあるという。

個人的にはメイソンの中身イケメンっぷりったら理想の恋人そのものな感じである種の感動すら覚えました。彼こそGraceだと思う…(笑)

 

90分映画だし、疲れた時にも何気なく観れる、だけど心に何か温かいものが残るような、そんな作品でした。

グレイスがランプ割るとこは「物にあたるな」とは思ったけども…(笑)

満足度99%は伊達じゃないです(笑)

 

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