月に囚われた男
MOON
2009年制作 2010年日本公開 イギリス 97分
監督:ダンカン・ジョーンズ
キャスト:サム・ロックウェル、ケヴィン・スペイシー、ドミニク・マケリゴット、カヤ・スコデラーリオ
サムは地球で必要なエネルギー源を採掘する為、3年間の契約で月にたった1人で滞在する仕事に就く。
地球との直接通信は許されず、話し相手は1台の人工知能コンピュータだけの環境だったが、任務終了までに2週間を残すある日、サムは自分と同じ顔をした人間に遭遇する。
大きい意味で1シチュエーション(月での話)なこの作品。ダンカン・ジョーンズがデヴィット・ボウイの息子って予備知識しかない状態で観ましたが、なかなかよく出来た作品でした。
いやー、SFって普段全く触れないので新鮮で新鮮で。
私のSFって藤本先生のSF(少し不思議)か星新一くらいのもんです。小松左京も読んだことないしね。
ジャンルとしては「SFスリラー」ってことですが、なるほど、スリラーでもある。自分を主人公サムの立ち位置で想像してみるとスリラーです、本当に。でも客観的に観るとスリラーとはちょっと違うかな。結構人間ドラマな部分?もあるかと。
結構良い意味で期待を裏切られた感じだったので1時間半ガッツリ楽しめました。
個人的に1番裏切られたのは制作年。1970~1980年の雰囲気が見事に作られていてまさか2009年の作品だとは思わなかったよ。ローバーなんてどうみてもミニチュアだし、基地の外は良い感じにショボい。もう絶妙にショボくて最高でした。VFXバリバリがあまり好みではないので私としては堪らない。
ダンカン・ジョーンズの次の作品である『ミッション:8ミニッツ』も観ようかな。評判良いみたいだし、なんてったってジェイク・ギレンホールだし。
以下ネタバレあり
地球に残した妻と幼い娘を支えに、3年契約の月での1人の仕事を残り2週間で終え地球に帰れるサムだが、3年間の勤務で精神的に疲労し幻覚を見るようになりとうとう事故を起こしてしまう。しかし目覚めた時に自分と同じ顔・同じ記憶を持った人間がいて…。という話。
SFを普段観ない私はまさかクローンだとは思わず。普通にサムの幻覚だと思ってたよ。幻覚に殺されるタイプの話かなーなんて思ったけどそれじゃSFにならないか。
しかしSF脳のない私は、いったい何故クローンなのか。ガーティのような人工知能ロボットを作れるならロボットに作業させればいいじゃないか。と思い不思議な気持ちに。
記憶を与えるって酷だよね。それが励みになるのかもしれないけどクローンなら最初のプログラムでなんとかならないのか、それはロボットか。『しわ』を観た時にも思ったけど人を人とするのは記憶だと思うので、偽の記憶を植え付けられるって結構トップレベルの拷問だよね。
サム対サム、サム対ガーティを予想したけど、クローン同士が生き残りの為に協力したり、3年の寿命を感じた方が相手を慮ったり、会社の手先だとばかり思ってたガーティがサムの味方だったり、結構ハートフルで熱い展開でビックリ。良い意味で予想を裏切られました。
個人的にはこのガーティが堪らなかった。良い奴で…。クローンだってこともアッサリ教えてくれるし。会社にバレて壊されないようにね…と思いながら鑑賞してたよ(笑)
それにしてもこのルナ・インダストリーズという会社が韓国企業っていうのが謎の笑いどころでした(笑)
クローンに人でなしなことをさせてボロ儲けしてたっぽいけど、ラストにクローンの逆襲に遭い痛い目に合うっていう、何故韓国企業なのか、別に韓国である必要性はないのだけど…(笑)監督は何か思うところでもあるのか…。
ストーリーは全く違ったけど昨年表紙買いをして物凄くやられた町田洋さんの『惑星9の休日』に収録されてる『衛星の夜』を思い出して久々に読み直したけど、やっぱ好き。ワルツはガーティ的ポジションなのかな。
そして一緒に収録されている『UTOPIA』って話には映画好きなおじさんが出てくるんだけど、そのおじさんは淀川さんを彷彿とさせます、個人的に。「どんな映画にも何かしら輝くところがある」ってセリフとかね。
町田洋さんの漫画はこっそりオススメです、新しいの出ないかな。
小洒落たパッケージ、ポスターとか部屋に飾ったらオシャレ部屋になるね、きっと。
町田洋さんの既刊。 どっちかというと『惑星9の休日』の方が好き。