デビルズ・ノット
DEVIL'S KNOT
2013年制作 2014年日本公開 アメリカ 114分
監督:アトム・エゴヤン
キャスト:コリン・ファース、リース・ウィザースプーン、デイン・デハーン、ミレイユ・イーノス、ブルース・グリーンウッド
1993年、アメリカのアーカンソー州ウェスト・メンフィスで児童たちが無残にも殺害される事件が発生。彼等と顔見知りだったアイスクリーム売りの青年や現場近くにいた血まみれの黒人男性など、不審な人物がいたにも関わらず、警察は16歳から18歳の若者3人を容疑者として逮捕する。
私立探偵ロンは、事件捜査の経過に疑問を覚えて独自に調査を開始。
一方、被害者の母親パムは、裁判で次々と浮かび上がる捜査の矛盾などに戸惑いを覚える。
公開当時観に行きたかった作品。コリン・ファースだし。
でも時間の関係で観に行けなかったものが、ようやく1週間レンタルOKになったので早速借りてきました。
実際にあった未解決(?)事件をベースに作られた作品なんですが、これが実際にあったと思うと色々考えちゃうよね。
でも結局いまだに真相はわかっていないわけで…
この事件に関しては調べると色々出てくると思うのでそちらも併せて見てみてもいいと思います。
1つの映画作品として観ると少し退屈かもしれません。
事件が起こり、ただ淡々と裁判が進んでいくので。証人として出てくる人たちの信憑性もこちらにはわからず。
ただ真相はわからないのに、この作品を観ると3人の青年たちは犯人ではないと思ってしまいます。あくまでも真相はわからないのに。これも一種の集団心理というか、流されやすいってことなのかな。
そういう点で、ストーリー展開は単調ですが、なかなか面白かったというか興味深かった作品でした。
でも実話系の作品で最後にモノローグでその後を伝えられるとなんかめっちゃ心にズシッとくるんだよな。『イミテーションゲーム』とか『遠い空の向こうに』とか。良いことも悪いこともなんかズシッとくるわ。
以下ネタバレあり
なんでしょうね。観ていてすごくモヤモヤする作品でした。
あ、勿論この映画作品に対するモヤモヤではなくこの事件に関するモヤモヤです。
この作品を鵜呑みにしてみると、こんなことが罷り通っていいのか!という感じで。
3人の少年が殺された事件で、当日謎の血まみれの男がいるという目撃情報があったのに何故かスルー。被害少年たちと顔見知りの青年がそれらしいことを言うものの撤回してスルー。
悪魔崇拝しているという青年3人(内1人は悪魔崇拝しているように見えず、知的障碍者のよう)に警察は目をつけ、彼等を容疑者として逮捕。
彼等が無実を訴えてもスルー。
容疑者の自白も知的障碍者の子に真偽のわからぬ目撃情報を聞かせ、誘導尋問のような自白。
スティーヴィの母親も最後に夫の怪しい点をロンに告げたけど、なんでもっと早く言わないのか。
個人的に最もモヤッとしたのはこの黙ってる母親でした。
いや、嘘証言のアーロンとその母にはモヤッと…いや、この2人にはイラッとしたけど。
警察や他の街の人たちもそうだけど、なんとしてでもダミアンを犯人にして死刑にしようとしている感じが胸糞極まりない。
アメリカにとっての悪魔崇拝が一体どれだけのものなのか、あまり宗教というものと密接ではない私が推測するのが難しいけど、黒い服を着て、へヴィメタを聴いて、自傷してたら、そこまで忌み嫌う対象になるのでしょうかね。
まぁ小動物を殺していたかはよくわからないですし、もしそうだとしたら腹は立つけど、でもじゃあこいつらを死刑に!とはならないな。
あ、あくまでもこの作品のストーリーに則るとこう思うってだけですので、本当に街の人たちがグルだとか、ダミアンは確実な無実と思ってるわけではないです。
ただ観ていて、悪魔崇拝がどうのって言うか、単純にただの魔女狩りだよなって感じ。
今でこそ個性と認められやすい異端思考?ですが、ほんの十数年前でも異端は一種の蔑みの対象だったなとしみじみ。
確かに私の小学生の頃とか、他の子とは違う子は少し遠巻きにされる感じはあったな…田舎だから余計かもしれませんが。
勿論他者と違うものはおかしいと決めつけるのは好きではないですし、違うからこそ楽しいと思いますが、でも最近の、なんでも個性個性で片づける風潮はなんだかなぁと思っています。
特に本人が自ら「でもこれがオレの個性ですし」みたいに言う時は大抵殴りたくなる…
個性ってものは宣言するものではないと思うし、そういう奴って大概自分のマイナスの面、欠点を「個性」で片づけようとするんだよね。
協調性・社会性の低さを「1人を好む個性」と言ったり(じゃあ多数がいるところで働くなと思う)、ただの身勝手な我儘も「素直に気持ちを言う美徳」かのように振る舞ったり(ただの思いやりの欠如だろと思う)。
一体いつから長所も短所も何でもかんでも「個性」「個性」と言うようになったんでしょうかね。
そういや『世界に1つだけの花』が流行った時、やたらと「オンリー1」「オンリー1」うるさかったですが、何の努力も才能も微塵もなく自分の置かれている現状に甘んじている奴に限って注意したりすると「でもオンリー1ですから」って言ってたあの感じと一緒ですね。
なので当時あの曲が凄く嫌いでした(笑)
いや、曲自体に罪があるわけではなく、都合良く解釈して偉そうにあーだこーだ言う奴が悪いんですがね。
「ナンバー1になれもせず、それどころかワーストから数えた方が早いようなオンリー1なんて何の価値もないよね。この世の中にたった1つしかないゴミでも、ゴミはゴミなんだよね」とか偉そうにしてた私も別段何の才能もないです。今あんなん言ったらモラハラで訴えられるよね、きっと。いや、ギリギリ冗談で済ませられる相手にしか言ってないですが…
しかし何故あの時の私はあんなにトゲトゲしていたのだろうか。1番殴りたいのは数年前の自分です。
…異端の話が何故こんな話に…
とりあえず胸糞だし、面白い作品ってわけじゃないですが、個人的にそこそこ集中して観れた作品でした。
コリン・ファースはなんかいつもとイメージが少し違ったな、なんとなく。