忘れることに備える記録

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3-4X10月

3-4X10月

1990年制作 日本 96分

監督:北野武

キャスト:小野昌彦、ビートたけし石田ゆり子、井口薫仁、飯塚実

ある日、勤務先のガソリンスタンドで暴力団組員にからまれた冴えない青年・雅樹は、逆上しその組員に殴り掛かる。

しかし、そのことが原因となりガソリンスタンドが暴力団に強請られる事となる。

追い詰められた雅樹はそのことを所属する草野球チームのコーチであり、また以前、組長と兄弟分であったスナックのマスターに相談、雅樹に同情したマスターは問題解決のため組に出向くのだが… 

 

続けて北野作品です。とりあえず2作目。 

映像とか演出の点では北野作品だなーと思ったんですが、北野作品の私の好きな部分でもある音楽の点が他の作品とかなり違ってました。

なんせNO BGM。全くでございます。エンドロールにすら音無し。

あの印象的な音の使い方がなかなか好きなのに…と思うものの、NO BGMもなかなか。

むしろ「あれ?音無くね?」と気付くまで少しかかったくらい。

『その男~』で思った覗き見感がより強くなった気がします。

ストーリーとしてはよくわからない部分もあったのでストーリーをどうのは言えないですが、登場人物が魅力的と言うか…描き方が魅力的だったかな。

全体的に満足でした。

私の1番好きな邦画『バタアシ金魚』と制作年が一緒ということで、この時代の街の雰囲気とかが「やっぱ好きだなー」としみじみ。若者の服装とかも、ダサいと思いつつもなんか好きです。


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3-4x10月 - 劇場予告編 (Takeshi Kitano) - YouTube

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主人公、雅樹のことが全然わかりませんでした。

ボーっとしていてあまり感情を出さない割にヤクザにも急にキレて殴り掛かったりするし、それに対する恐怖心とかはないように見えるし、彼女なんていないよとか言ってたのにけしかけられたらすぐに女の子誘えるし、変わらずボーっとしてるのに銃を手に入れに沖縄行っちゃうし…

一体何を考えて行動しているのかが全くわからない。

でもそれに対して嫌な感じを覚えるわけでなく、別に共感するわけでもなく、なんだろう、こういう人いるんだなー面白いなーって感じで観れた。

そして脇を固めるたけしファミリー。出るわ出るわたけしファミリー。

主要人物だったガダルカナル・タカの食えない感じも好きだったし、ダンカンの何か足りなそうででも意外とまともそうでもあるキャラも良かった。

あと芦原は出た瞬間「菊地!」と思った(笑)昨日の今日だからね。

若い石田ゆり子も可愛かったし、個人的にはふせえりさんがとても好きです。

なんだろう、最近のふせえりさんは近所のおばちゃん的な存在で好きなんですが、この時は何ていうか絶妙な感じが。上手く言葉にできないけど凄く絶妙で、より一層好きになりました。

 

で、沖縄に行ってからの武と渡嘉敷のキャラもよくわからない。でもその人物が一体どんな人物かわからないから何?って感じで、むしろ、他人がどんな人間かわかる方が不思議なんだよねっていう「普通」を改めて意識させられたというか。

その後を見せてからストーリーを進めたり、ストーリー自体に関係あるのか?っていうシーンが多かったり、なのに相変わらず省略も多いし、説明不足と言ったらそれまでですが、それでもやっぱ「説明不足だなー」とは思わないから不思議。

説明不足な作品を観て「説明不足だったな」と思うことは結構あるのに、何故北野作品には思わないのか…。

まぁこれは私がそこにリアルを観ているからでしょうが。

主人公の人となりを描いて、動機や行動理由を描いたのに急に「え?」という行動をされると「説明不足」「突拍子もない」と思うんですが、これだけ主人公の人となりもわからず何を考えているのかもわからず何を目的としているのかもイマイチ掴めないならそれはもう「説明不足」ではないんですよね。

知り合いが急に街中で踊りだしたら「どうしたんだ?」と理由を求めるのに、街ですれ違った知らない人が急に踊りだしたら「そういう人なんかな」くらいに思うのと同じ感覚…でしょうか。…なんだこの例え。

 

まぁとりあえずいつもの映画鑑賞とは違った感覚で楽しめる作品たちだな。

感覚としてはゴダールを観ている時に似た感じでしょうか。ゴダールの方が大好きですが。

 

この作品で1番好きなシーンはダンカンが歌う、なんとなく不安になる「悪女」です。

 

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