忘れることに備える記録

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君が生きた証

RUDDERLESS

2014年制作 2015年日本公開 アメリカ 105分

監督:ウィリアム・H・メイシー

キャスト:ビリー・クラダップアントン・イェルチンフェリシティ・ハフマン、セレーナ・ゴメス、ローレンス・フィッシュバーン

銃乱射事件で息子がこの世を去りすさんだ生活を送るサムは、別れた妻から息子が遺した自作曲のデモCDを渡される。

その曲を聴き息子のことを何も知らなかったことに気付いたサムは、遺品のギターを手に息子の曲を場末のライブバーで演奏する。

その演奏に魅了された青年のクエンティンはサムを説得し、年の離れた2人でバンドを結成するが… 

 

劇場に行けなかったこの作品、ようやく観ることができました。

いやー、良かった。

途中で「あれ?え?思ってたのと違う!」となって、意外とズーンとくる話なんですが良かったです。

特に主演のビリー・クラダップが何とも素敵な雰囲気を醸し出していまして。声も素晴らしい。あとローレンス・フィッシュバーンが画面にいる時の何とも頼もしい感じ。監督が出てくるのってあまり好きじゃないんだけど、ウィリアム・H・メイシーがそこそこ出てきても何か許せた(笑)不思議。

でも個人的にはサムが…あのラストが…。素晴らしかったけど、サムが…。なんだろう、あの終わりじゃサムはどうなんだ…?

いや、素晴らしかったんだけどね。

とりあえず観終わってすぐにサントラをポチってしまいまして、明日届きます。楽しみです。

 


『君が生きた証』予告編 - YouTube

 


f:id:ROUTE375:20151103175342j:image

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あらすじを見る限り『ソラニン』のような感じなのかなーと思ってました。

しかし!まさかの息子が加害者の方という…

大学で銃乱射で6人殺してから自殺したという…

これ本当途中までわからないんですが「ええええええええ!!!」ってなりました。

気軽に観てたんですが意外や意外、重いというか複雑なテーマで…

いつもだったら「お前から声かけてきたのに、曲に惚れたはずなのにその態度かよ、クエンティンこの野郎!」となるところなんですが、事情が事情なのでこっちとしても複雑。まぁクエンティンのような子はそもそも苦手なタイプですが。

序盤でなんとなく「?」となっていた部分(マスコミの感じとか、会社の感じ、そして夫婦共に住む場所を変える感じとか)が腑に落ちるんですが、急に心がざわつき出します。

サムがラストで歌う「SING ALONG」のデモの中に録音を邪魔されたジョシュの「こんなとこ出なくちゃ」と言う言葉が入っていて、その「こんなとこ」が意味するものを考えるとこれを聴いた時のサムのあの表情が何とも痛々しい。「HOME」と一緒に考えるともういたたまれない。

 

そもそもサムがジョシュの曲をやりだしたのは別に「ジョシュの曲をみんなに聴いてもらいたい」とかではなく、ジョシュがケイトに自慢してくれたような、大事に写真を飾ってくれていたような、音楽が好きで一緒に音楽をできる父親でいたかったという後悔なのかな。そしたらもっと早くジョシュの気持ちに気付けただろうし。

それこそ邦題の『君が生きた証』ってのは、ジョシュが生きていた証を周りの人に教えたいわけではなく、息子が生きていた証を目を背けながらもサム自身が感じたかっただけのことなんだろうなと。私は観る前は前者だと思っていたので余計に衝撃が大きかったけど。

サムはクエンティンにジョシュを重ねたけど、でもクエンティンとジョシュが違うことはちゃんとわかっていて、だからステージ上であんなに楽しそうでもバーを出てボートハウス(ってほどのもんではないけど)に向かって自転車を1人漕ぐシーンがあんなに胸に来るんだろうな。

 

でもやっぱ一番心に来るのは「SING ALONG」だな。

そもそも歌詞はAメロのところまでしか書いてなかったし、デモCD内ではBメロの途中から歌詞が違っているんだよね。

だからラストで歌う「SING ALONG」は途中からサムの創作になるわけだけど、初めて?大学に行ってジョシュが起こした事件の追悼碑を見て、サムがようやくあの事件に向き合って、そしてできたのがあの歌詞で、でも曲を披露する前に「彼が書いた曲です」って紹介する。

そしてそのバッグでボートをデルにあげた(多分店を買った時の好条件だよね)シーンが映るんだけど、サムはどうするのってのがもう気になって気になって。

クエンティンにもギターをプレゼントしてたし。まぁ元々がエリート広告マンだったから蓄えはあるんだろうけど、でも店を買ったところで店をやるようには見えないし。

なんか身辺整理に見えて心苦しくて…

「SING ALONG」を歌い終わった表情も何とも表現しにくいし、いつものように自転車で帰っていくシーンもなく。

サムは?サムは…?となった。

What is lost can't be replaced

What is gone is not forgotten

I wish you were here to sing along

My son 

って歌詞は本当にグッときたけど、サムの成長?のようにも思えるけど、どうなんでしょうかね。

 

 

あと観ていてビックリしたのはベン・クウェラーが出てきたこと。

あまりにも普通に出てきたから「あれ?」ってなった(笑)

ジョシュとケイトのデュエット曲「Hold on」はベン・クウェラーとセレーナ・ゴメスでPVまで作られています。

このPVもメイシーが監督しているそうです。キーボードで出てるしね(笑)


“Hold On” from Rudderless performed by Ben Kweller ...

 

テーマが思ったより重かったというか複雑だったので自分の中で消化できていない部分がありますが、観て良かった作品でした。

 

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