悪童日記
LE GRAND CAHIER
2013年制作 2014年日本公開 ドイツ・ハンガリー 111分
監督:ヤーノシュ・サース
キャスト:アンドラ―シュ・ギーマント、ラースロー・ギーマント、ピロシュカ・モルナール、ウルリク・トムセン、ウルリッヒ・マテス
「『汝、殺すなかれ』って言うけど、みんな殺してる。」
第二次世界大戦末期の1944年、双子の兄弟は、都会から田舎に疎開する。
祖母は20年振りに戻った娘との再会にも不満顔。双子たちだけが農場に残され、村人たちに魔女とうわさされる祖母のもとで水汲みやまき割りなどの仕事をこなしていく。
次は「アクトオブキリング」と「私の、息子」を借りようっと!と先週からウキウキしてたんですが、今日行ってみたら全てレンタル中…!なんでよりによって今週全て借りられてるんだ!
ちょっとショックを受けて店内を徘徊、観たいのは歩けど気分はもうアクト~だったからピンとこない…。
しかし!新作コーナーに「悪童日記」発見!あ、レンタル開始したんだー!と即手に取ってきました。
結構アレな内容らしいけど評価の高い作品、という前知識のみ、勿論原作は未読。
で、観ましたよ。…うあああ、なんか心に来るなー…
公式にも感動って書いてあったりするけど世間一般の感動って意味を想像するとマジで打ちのめされそう。感情を動かす、という意味では感動する作品に違いないですが。
それにしてもこの双子、なんたる美少年双子。目の力強さにオッサン趣味な私も目が離せなかったです。
あ、原作は結構グロい?エグい?みたいなんですが、映画は一応PG-12なのでそこらへんは心配しなくても大丈夫です。
以下ネタバレあり
冒頭は普通の幸せそうな家族。お父さんが爪を切ってくれたりね。
でも戦争が激化してきて息子たちを守りたい親は疎開に出す。
そこの祖母が意地悪ばあさんで、双子は母が迎えに来てくれる日を待つが…
って話です。
ここらへんまではまぁありがちな感じ。
働かざる者食うべからず、な祖母に、空腹の為に手伝い(仕事)をすることに。
まぁこれも普通の流れ。
でもこの双子、双子で一緒にいるからってこともあるのか、ただの苦労話じゃない。
祖母が何かにつけて叩いてくる、街の人にも叩かれる。じゃあ肉体の訓練をしようってお互いが罵りながら顔を殴ったり、体をベルトで思い切り叩く。痛くない、痛くないぞって言いながら。
ある日森の中で会った兵隊が三日何も食べてなく飢餓で死んだ時は、こんな死に方しない!と決め四日の断食に挑戦。いっつも芋のスープばっかなのに見せつけるように祖母は鶏肉を食べたりする。でも我慢。
殺しになれなくてはいけないってことで、虫を殺して魚を殺して。殺す必要がなくても殺さなくてはいけない、これは残酷さになれる訓練だって。
別れる時に母が言った「強くなって」という言葉を繰り返しながら、自分たちに試練を課して強さを求めていく。
将校になんで訓練するのかって聞かれて「痛いのは嫌いだけど、痛みや寒さに負けたくないだけ」って言える強さ…そんな強さはいらないのになー、と現代の日本で暮らす私は思ってしまうわけだけど、この時代に生きていない私はそんなこと言えないなーとしみじみ。
で、基本的に周りは敵、みたいな双子なんだけど、双子に同情して暖かい靴をくれた靴屋さんがいて。そしてお風呂に入れてくれた司祭館の綺麗なお姉さんがいて。
お、なんか優しい流れ?と思った(でもこの司祭館のお姉さんはなんかイッちゃってる感も)ものの、ユダヤ人がドイツ軍に連れていかれる行進を見てお姉さんは慌てて窓から「靴屋がまだ残ってる!」って叫ぶ。窓からユダヤ人の子供にパンを渡す振りして楽しんでる。双子に「やつらはケモノ」とまで言う。
確かに靴屋さんの扉にはダビデの星が描かれてたなー。
あああああ、2日続けてユダヤものだった…!とちょっと後悔した。差別系のものは続けて観ると心にくるんだよな…。アクトオブキリングを観ようとしてた私が言うのもなんだけど。
そしてそんなお姉さんを見て、とうとう双子は行動に移すことにする。
彼らの中の1本通ったものに従って、世間の常識、一般的な正義や悪といった概念じゃない、彼らなりの生きる為の規律で行動する。
それがまた苦しいんだよね。彼らの行動は法律に触れる、けど彼らの時代・状況において、それは本当に悪なの?って。
その後、母とも父とも再会するんだけど、双子の選択は彼らの規律に沿ってるわけで。その選択で彼らを責めることはできない。
厳しい戦争下で強くならなければ、と生きてきた双子には戦争が終わっても心の平和は訪れなかった。でも生きていくために、「強くならなければ」。残る一番大事な訓練は個人的に選ばなくてもいいじゃないと思わずにいられなかった。
いや、この双子ならこの選択を選ばなくては嘘なんだけど。
この双子がこの後どうなるのか。
気になるけど描いてほしくない。
心の中で、出来る限りの幸せな結末を、私からこっそり2人に渡したい。
原作はこちら。
読みたいけど、ちょっとしばらく時間を置きたい気も。
ちなみに原作では続きがあります。三部作です。
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