忘れることに備える記録

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Dearダニー 君へのうた

DANNY COLLINS

2015年制作・公開 アメリカ 107分 

監督:ダン・フォーゲルマン

キャスト:アル・パチーノアネット・ベニング、ジェニファー・ガーナ―、ボビー・カナヴェイル、ジョシュ・ペック

作曲活動から離れて何年も経ち、人気アーティストとしての盛りも過ぎてしまったダニー・コリンズ。

そんなある日、マネージャーから古い手紙を見つけたと渡される。それは駆け出しだった43年前の自分にジョン・レノンが送ってくれたもので、富や名声に自分を見失わず、音楽と真摯に向き合うようにとつづられていた。

それを読んだ彼は人生をやり直そうと決意してツアーをキャンセルし、一度も会ったことのない息子を訪ねる。 

 

アル・パチーノが大好きなので即決で観に行くことに。

最近多い音楽の実話を基にしたお話(と言ってもこれは『ほんの少し実話を基にした』お話ですが)で「またか」という気持ちがなかったわけではないですが、アル・パチーノならね!若い時からずっと好きな俳優なんてアル・パチーノくらいですしね。

と、そんくらいの気持ちだったんですが、予想以上に良かったです。

大きな盛り上がりとか劇的な展開があるわけではないんですが、登場人物が魅力的で、アル・パチーノの演技は勿論、脇を固める俳優も良かったですし、ストーリーも笑えて切なくてでも幸せな、何も考えずに楽しむのに最適な良作でした。

そして物語を彩るジョンの曲も、パチーノの歌声も、なんだろう、なんか色々ととてもナチュラルな空気感だったと思います。

あまり期待していなかっただけに、本当に良い作品を観たなーという気持ちが強い1本でした。レンタルが出たらもう1回観たいです。


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映画『Dearダニー 君へのうた』予告編 - YouTube

 

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

過去に成功したミュージシャンが、過去の売れた曲でコンサートを回りベストアルバムを何枚も出し、いまだに豪華な暮らしをしている…という、「どこにでもいるんだね」と思ってしまうようなそんなミュージシャンが、昔からずっとファン(崇拝しているとも言う)だったジョン・レノンから自分宛の手紙を43年越しで手に入れ人生を変えていくお話です。

ジョン・レノンからの手紙を数十年振りに受け取ったというフォークミュージシャンのスティーブ・ティルストンが元ネタです。実話なのはここらへんくらいだと思います。

手紙の内容は実話に沿っていて、急に売れ始めた若手ミュージシャンが雑誌のインタビューで影響を受けた人にジョン・レノンを挙げ、「富や名声を手に入れたら作る曲は変わると思うか」という記者の質問に「変わると思う」と答えたら、ジョン・レノンから「僕は変わると思わない。キミはどう思う?いつも真摯にいればいい。何かあれば力になるよ」というメッセージと電話番号が書かれた手紙が送られてくる。

でもそれが雑誌社宛に送られてきて、編集の悪意?で本人に渡されることがなかったという。

憧れのジョン・レノンからそんなメッセージを受け取っているとは思ってもいないダニーは酒にクスリに女に、絵に描いたようなロックスター人生を送ってきたものの、その手紙で音楽に、そして人生に真摯に向き合うことを決める。

まぁ産まれて一度も会ったことのない息子に会うわけなので、そううまくはいかないんですが、このダニーが根がいい奴で全然憎めない。むしろ観ているこっちは「いやいや無理だよ…」と思いつつも応援したくなる。

そんなダメなんだけど魅了的なキャラをアル・パチーノが好演してくれて余計に憎めなかったです。

「昔の曲はもうやらない」とまで言って作った新しい曲を演奏できなかったのは、臆病になった部分もあるけど、みんなが求めているものに応えたいというダニーの気持ちもあるんじゃないかな、とすら思えるくらいにいい奴で。

自家用ジェットだの、ド派手なツアー用トレイラーだの、高級車をポンとあげちゃったり、鼻につくようなロックスターなのに全く鼻につかないから逆に困った(笑)

そしてラストが本当に良かった。

実際は検査結果がどうだったのか、そしてダニー自身もあの曲を披露できたのかどうなったのか、そういうのはわからず仕舞いなんですが、きっと「Everything's gonna be alright」だと思える、なんとも幸せな終わり方でした。

エンドロールが流れ始めた時に少し微笑んでしまうような、いや実際ちょっとニヤついてたと思います(笑)

 

久々に色んな人に観てもらいたいと思った、ハッピーな良作でした。

ちなみにセンチュリーシネマで観ましたが、お客さんはジョン・レノン世代の方が多かった気がします。