フルートベール駅で
FRUITVALE STATION
2013年制作 2014年日本公開 アメリカ 85分
監督:ライアン・クーグラー
キャスト:マイケル・B・ジョーダン、メロニー・ディアス、オクタヴィア・スペンサー、ケヴィン・デュランド、チャド・マイケル・マーレイ
2009年、新年を迎えたサンフランシスコのフルートベール駅。多くの人が入り乱れるホームで、22歳の黒人青年オスカー・グラントが銃で撃たれてこの世を去る。
命を失ったオスカーにとって、母の誕生日を祝い、娘と遊び、家族や友人と過ごしたいつもの日常が、悲しいことに最後の日になってしまった。
予告を観て気になったので借りてきました。
2009年の元旦に本当に起きた事件を描いたこの作品。近年でも同じような事件が起きて問題になっていますが、この作品は社会派作品というより人間ドラマでした。
でも人間ドラマだからこそ心に響く作りになっていると思います。
なのに繰り返される同じような事件、なんとも言えない気持ちになるな。
それにしても母親役のオクタヴィア・スペンサーが良かったな。深みのある、優しく強い母の姿にグッときたな。
以下ネタバレあり
始まってすぐ流れる映像はその場に居合わせた人が撮った本当の事件の映像です。
その時の駅の空気感を味わって、青年が無抵抗の上に撃たれたことを知ってから、作品が始まります。
そして序盤というか、1時間以上はこの青年がどんな人物なのか、そしてどのように人生最期の日を過ごしたのかがつづられていきます。
この人生最期の日は大晦日であり、母の誕生日でもある。
大麻の売人をしていたオスカーは彼女に新年の誓いとして「売人をやめる」と言う。
しかし現実としては2週間前にまっとうな仕事(スーパーの店員)は遅刻でクビになっていて、店長にもう1度雇ってくれるように頼むが断られてしまう。
彼女にクビになったことを言えずに再び売人をしようと思うものの、逮捕された時に面会に来た母とのやり取りを思い出し、大麻は海に捨ててしまう。
意を決して彼女のクビになったことを伝え、でもこれからは本当にまともに生きていくと誓い、信念を新たな気持ちで迎えたものの…というお話なんですが。
上記のようにこのオスカーはそこそこ悪い人です。でもスーパーで困っている人を見かけたら日本人の自分としてはそこまでする?ってくらい助けてあげたり、ひき逃げに遭った野良犬を抱き上げたり、オスカーの優しさも押しつけがましくなく描かれていて、ダメ人間だけど愛おしい存在に描かれているからこそラストの事件が観ているこっちの心にズーンとくるのです。
普通の生活の部分が長いと言う方もいるみたいですが、個人的にはあのくらいあって良かったと思います。オスカーが一体どんな人なのか、それがきちんとわかってこその物語だと思うので。
個人的に堪らなかったシーンは、ずっと気丈に振る舞っていた母親が亡くなったオスカーと面会した時に泣きながら「私が電車で行けと言ったから」と後悔するシーン。
そして前にオスカーが逮捕されて面会に行った時はオスカーに「ハグしてくれ」と言われても無視を貫いた母親が、殺人事件なので触れないでくださいって言われたものの「抱きしめさせて」と泣くシーン。
この母はなんて強い母なのだろう、と思いました。
母は強し。オスカーのように母を大事にしないとなーとしみじみ感じました。
映画は全然関係ない余談になりますが、母と言うとここ半年か1年くらいの新聞の読者投稿の記事で「誰でもいいから1人会わせてあげると神様に言われたら、お父さんには悪いけどやっぱお母さんに会いたいって夫婦で話した」っていう趣旨の70歳くらいのお婆さんの文章を思い出します。
父も大好きな自分としては悩みますが、1人と言われればやはり母かもしれないな、でもな、とちょっと悩みました(笑)
そんな気持ちを70歳の方も持っているんだなと思うと、家族って、親子って本当に不思議な関係に思えてくる。
親孝行しなくてはね。